第7話

「ヴァァォォォンー!!!!!」

魔獣人としての狼の力が抑えきれず、遠吠えと共に姿は人狼の姿へと変わり、背中にはドラゴニュートの様な赤黒い翼が生え、爪は普段の魔獣人化に比べ赤黒さが増していた。

尻尾の数も数本増えており、狼の様な尻尾と竜人の尻尾、妖狐の尻尾など生えていた。

ルーナは僅かな理性を保とうと必死にうずくまっていた。だが、そんなルーナの心境を知らず静かなる海に暮らす魚人が心配そうに近づいてきた。

私は気配を感じ、視界に入れてはならないとうずくまりながら怒鳴り声を上げた。

「私ニ近づクな!!」

魚人は後退り去っていった。

私は少し安心して人間の姿にもどる術を考えていた。このままでは何もかも破壊してしまう…。

そんなルーナの安心感を壊すように、魚人達は数を増やして再び近づいてきた。気配から魔法を使えるものを連れてきたのだろう。

だが、今のルーナにとって何をされても、刺激にしかならない。

「何モ…すルな!!!」

「魔獣人を放置したら村が壊滅する…!すまないが今のうちにあなたを…殺す!」

そういい、魚人達は魔法を中心に飛び道具でルーナ目掛けて放った。

その瞬間、ルーナの戦闘本能が暴れだし、理性が途切れた。

まず飛んでくる飛び道具や魔法は叫びで弾き返した。その後魚人を視界に入れたルーナは地面を蹴りあげ、ものの数秒で肉塊へと変えた。

そして元魚人達の村が近くにあり、そこにはそれなりの魚人達が暮らしていた。ルーナは生ける者の匂いや気配を感じ、翼を広げ飛び上がり、空から強襲した。右手に赤い獄炎を纏い、左手に青い冷気を纏い、村の魚人達を見つけ次第、獄炎や冷気から作り出す氷塊を投げ、次々と殺戮をしていた。

魚人達も殆どが肉塊となった時、村の奥から重装備をした魚人がルーナを睨んでいた。

「よくも俺らの村を…!ここで終わらせてやる!」

「煩イ煩イ…消エロォォォ!!!」

ルーナは氷塊を数個作り、魚人目掛けて投げた。

魚人は大きな盾で全て防いだ。視界のほとんどを覆う大きな盾の構えを解くと、ルーナの姿はなく魚人は危険を感じ真後ろを見た。

そこにはさっきまでは赤い獄炎だったものが黒い獄炎へと変わり、大きな盾よりも大きな獄炎が目の前にあった。

ルーナは笑いなが黒い獄炎を魚人に向けて放った。

魚人は盾で防ぎきれないと察知し海へと身を潜めた。しかしそれは想定内で足場ごと燃やし尽くし、海は一瞬で煮えたぎった。

壊れた家や足場の欠片と共に魚や魚人達が煮え上がり、茹で釜で茹でられたように白目を向きながら息絶えていた。

この村の魚人達は為す術なく、魔獣人化したルーナに全滅させられた。

そして朝日はのぼり、満月の力が収まりつつあるルーナは僅かな理性を取り戻していた。

(このままではまた殺戮を…。あの…場所へ…)

ルーナはカバンから小さな鈴を取り出し、それを鳴らした。すると雲の隙間から光が差し込みルーナを照らした。光からひとつの影がルーナに向かって飛んできていた。

「おいおい…派手にやったなぁ…w」

「スまん…」

「そろそろちゃんと身につけるかぁ?」

「ソノ方が良さソうだ…」

「まぁ今はゆっくり休みな。」

そう言い魔獣人化しているルーナの目でも追えない速さで懐に入り、ルーナの溝打ちに1発。そのままルーナは気を失った。

「全く…手間のかかる子を残していったもんだよ」

そう言い残し、青いドラゴニュートはルーナを抱えながら光の元へと帰った。

静かなる海の海水は数十年、煮えたぎったままだったという。

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魔獣人 オオカミ @DendokuTOKAGE

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