オタク向けエロ・コンテンツにありがちなアレをテロリストの取調べに活用した結果

@HasumiChouji

オタク向けエロ・コンテンツにありがちなアレをテロリストの取調べに活用した結果

「なぁ、本当に『催眠アプリ』なんてのを取調べに使って良かったのか?」

 私は、公安警察の担当者にそう訊いた。

 私の所属は検察の首都圏支局で、今、私が担当している事件は……大きなニュースになった、あのテロ事件だ。

「いや、でも、使っちゃ駄目だ、って法律は無かったんでしょう?」

「そうだけど……」

「中々、被疑者マルヒ自白してうたってくれなくて……勾留期間をこれ以上引き延すのも無理だったから仕方ないですよ」

「でも、あの事件と同じ手口のテロが、また、起きた訳だから……」

「えっ? 実は、あいつは冤罪で、真犯人は別に居るって言うんですか? でも、催眠アプリを使って、本当の事を言え、って命令したんですよ。催眠にかかった被疑者マルヒが嘘を言う訳ないじゃないですか」

「でも、弁護士は、自白の信憑性を問題にするぞ」

「そこも大丈夫です。マスコミに流してない爆薬や起爆装置の入手経路も自白ゲロしました。公安ウチがつかんでる情報と、ほぼ同じ内容を自白うたってくれましたよ。『秘密の暴露』の条件も満たしてます」

「じゃあ、今、娑婆でテロを起してるのは誰だ?」

「そこも大丈夫です。それをやってる仲間の情報も自白うたってくれました。公安ウチが目星を付けてた連中でしたよ」

 その時、私は……精神鑑定の資料に目を止めた……。

「ふ〜む、やや強めの拘禁反応は出てるが……裁判での質問の受け答えには問題は無しか……。あと、強い洗脳を受けてる可能性が有り、上位と見做した相手に盲従する傾向が極度に強いが……過去の判例を考えれば、裁判所は『責任能力あり』と判断してくれる可能性大か……。この精神鑑定をやったのはいつだ?」

調ですが?」

「ああ、そうか……。まぁ、……テロ組織の一員なら……何かの洗脳を受けてる可能性も有る訳だしなぁ……」

「ええ、背後に居る組織についても自白うたってくれましたよ。やっぱり、でした」

「そうか……じゃあ、こっちも起訴手続を始める事にしますよ」

 だが……。

 多分、被疑者は有罪になるだろう。

 被疑者が自白した仲間や組織の人間も逮捕されるだろう。

 時間はかかるかも知れないが……いずれ、この一連のテロ事件は終息する……筈だ。

 けれど……。

 何だろう、この……喉元まで出かかっているのに、うまく言葉に出来ない違和感は……?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

オタク向けエロ・コンテンツにありがちなアレをテロリストの取調べに活用した結果 @HasumiChouji

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ