七の怪人
縁代まと
七の怪人
うちの中学には『七の怪人』という怪談がある。
母は「最近は七不思議も聞かなくなったね」と言っていたが、唯一残った怪談がこれだ。――残ったというよりも生まれたと言う方が正しいだろうか。
七の怪人は七不思議を全て検証した生徒が呪われた姿だと言われており、それ以来学校で七つの『七にまつわるもの』と関わると仲間にしにくるなんて噂されていた。
好奇心だけは人一倍強い友人たちはこの七の怪人を呼んでみようと言い出した。
便乗した僕も馬鹿だったと思う。
友人は僕を含めて仲間たち七人で夜の学校に忍び込んだ。
その中には紅一点で僕が好きな女の子も居たので、気分が高揚し正常な判断が出来なくなっていたと今更ながら言い訳したい。
僕らはまず七人で分担し七にまつわるものを持ち寄った。ただし全員だと人数の数字と合わせて八になってしまうため、七人中二人は共同で決めることになっている。
この二人というのが僕と女の子だったので高揚していた理由もわかるだろうか。
七福神人形。
七つの大罪に関する書籍。
七夕飾り。
七人の小人の絵本。要するに白雪姫。
七人ミサキの怪談を話す友人。
そして今日は土曜、七曜の七つ目。
――特に何も起こらず、少し残念に思いながら脱力した。
だが友人とのちょっとした悪事は楽しく、幸いにも警備が駆けつける気配もなかったため、今度は七夕に集まってみようかと談笑する。
「そろそろ帰らなきゃ」
そう言った彼女は一足先に帰ることになった。
彼女が外へ出る姿を窓から見送る。
すると、どこからともなく足音が聞こえてきた。
ここでようやく気づいたのだ。
女の子の名前は
そしてそもそも前提が間違っていたことにも気づく。――七の怪人の噂も七にまつわるものだ。これも数に含めるべきだったのである。
女の子は運が良かった。
僕らは運が悪かった。
足音が教室前で止まる。
今、ここには七にまつわるものが七つある。
七の怪人 縁代まと @enishiromato
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