【闇憑き姉妹シリーズⅤ】達磨

深川我無

達磨

街灯の明かりがポツリ、ポツリと夜道を照らす。


仄かな光源照らすのは夜道だけでは無かったらしい。


人氣のない深夜の町。街灯にたかる大きな蛾を指さして微笑む美しい双子の姉妹、輪廻と車輪カルマを灯りが照らす。


やがて蛾に興味を失くして立ち去る二人の少女の影がながーく伸びた。


やがてそれは闇に紛れて判らなくなる。



「ねぇ知ってる?輪廻ちゃん?」


「なになに?教えて輪廻ちゃん!」


「最近このあたりに変質者が出るんだって」


車輪は眉をハの字に曲げて不機嫌そうにつぶやいた。


「まったくそれは迷惑ね。いったいどんな変質者なの?」


輪廻も口をハの字に曲げて不機嫌そうにつぶやいた。


「それがね…」


車輪は声をひそめて輪廻の耳に唇を近付ける。


「真っ赤な頭の変質者なんだって…!」


輪廻が見ると、車輪は妖しく微笑んだ。


車輪が見ると、輪廻はキラキラ眼を光らせた。


「それは不思議ね車輪ちゃん!」


「そうよ不気味よ輪廻ちゃん!」


姉妹の手はガッチリ恋人繋ぎ。


腕をぶんぶん。スキップ。スキップ。


深夜の町を暗くて怪しい方へ。方へ。



古い畳屋の前に差し掛かると、おかしなモノが目にとまる。


茣蓙ござ胡座あぐらの人影あり。


太い腕組み視線は前に。


裸の胸板、筋骨隆々。


首から上は真っ赤な達磨。


ギョロリと睨んだ片目の達磨。


姉妹は顔を見合わせた。


キラキラ輝く四つの目。両手を繋いでコショコショ話し。


「きっとあいつよ輪廻ちゃん!」


「うん!うん!筋肉達磨の変質者!」


達磨は首だけぐるりと回し、こちらをじぃーっと睨んでる。


よくよく見るとあちらこちらからに赤い染み。


達磨の横には巨大な木槌。


双子はニヤリと口角上げた。


「ねぇ輪廻ちゃん。達磨と言えば何かしら?」


いたずらっぽく微笑む車輪にあどけない笑顔で応える輪廻。


「選挙に、鉢巻、達磨さんが転んだ」


二人は抱き合い達磨を見やる。


「そしてやっぱり

「そしてやっぱり


二人は達磨に駆け寄った。


達磨はぬっと立ち上がり、木槌を構えて怖い顔。


キャキャッと笑う双子の片割れ、輪廻に木槌が襲いかかる。


ぐっちゃ…


赤い飛沫が飛び散った。


それ見た車輪は両手をひらひら歌い出す。


「輪廻はめぐる♪くるくる廻る♪」 

「素敵な双子♪次はどんな娘?♪」

「とっても可愛い女の子♪」

「何度も何度も繰り返す♪」

「だって輪廻はめぐるもの♪」



達磨はくるりと車輪の方へ。


再び木槌を振り上げた。


「ターッチ!」


驚く達磨が振り返る!


そこには輪廻の妖しい笑顔。

意地悪含んだ奇麗な笑顔。


達磨は突然歩き出す。勝手に身体が歩き出す。


大きな筋肉役立たず。


おでこは壁に背中はこちらに。


やがて野太い…


だーるまさんがーこーろんだー


双子は木槌を引きずり近づく。


再び響く達磨の声。


だーるまさんがー…


ドスン!!


双子は笑顔でハイタッチ!


「うまくいったね輪廻ちゃん!」


「どんなもんだい車輪ちゃん!」


「わたしたち」

「わたしたち」


「変質者を退治しちゃった!」

「変質者を退治しちゃった!」


キャッキャと飛び跳ね無邪気な笑顔。


「達磨はお家に飾ろうね!」


「可愛いお目々も描きましょう!」


「黒い制服汚れは目立たず♪」


「闇は汚れを塗りつぶす♪」

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