いつも一緒の小さな友達

鳥路

ぬいぐるみの魔法使いの、始まりの日

人が空を舞う光景を見るなんて、始めてみた

それは交通事故とか飛び降りとかではない

・・・一人の人間の蹴りで生まれた光景なんて、誰が想像するだろうか


「・・・凄い」

「こいつらなんだったんだろう・・・いきなり飛びかかってきたから蹴っておいたけど」


幼少期を海外で過ごし、暇だったから勉強漬けの生活を送っていた

そのお陰で、大学は飛び級卒業できる程度の学力は持てた

家の都合で、日本に帰国した僕は・・・歳相応に小学校へ通うことなく、家の手配でとある高校に通うことになった


喧嘩と恐喝が日常茶飯事な不良だらけの高校「沼田高校」

そこに進学させられた僕は、不満全開で日々を過ごしていた

あからさまに不満げな態度は、そこに通っていた不良達の怒りを買っていたようで・・・こうして「お呼び出し」を受けた


正直怖かったし、殴られることも覚悟していた

けれど結果として、このお呼び出しで僕は怪我を負うことはなかったし

・・・会いたかった彼とも、巡り会えた


「喧嘩を買った事、バレたら九重先輩に怒られる・・・。いや、時間の問題か?」

「・・・」


光が差し込まない深海のように青い瞳がこちらにじっと向けられる

光の反射で緑にも見える不思議な目を持つ彼は、山吹色の髪を揺らしている

その特徴は、僕が探していた存在が持つ特徴だ


「見つけた」

「・・・?」

「君が、巽夏彦たつみなつひこ?」

「ん。そうだけど。お前、さっきの連中の仲間?」

「そんなわけないよ・・・絡まれていただけ」

「そ。で、俺に何か用?」

「き、君さ、強いんでしょう?自衛の為に、学校では一緒にいて!お昼ご飯、毎日奢ってあげるからさ・・・」

「いいよ」

「・・・ほ」


突貫なお願いを聞いてくれるとは思わなかった

けれど、この環境を無事に過ごす戦力と、役目を果たすのに丁度いい約束はできた

これでよっぽどのことがない限り毎日一緒にいられるはず

僕の役目は、神様と対話ができる能力を持つ存在である夏彦に巡り会い、彼を守ること

わざわざ高校に入れられたのも、帰国させられたのも・・・全部彼の「せい」だった

彼に出会うまでは、そう思っていた


「ところで、君は誰?」

「僕は卯月東里うづきとうり。よろしくね、夏彦」

「ん」


これが、僕らの始まり

ここから僕らは、行動を共にするようになった

出会うまでは、文句の一つでも言ってやろうと思っていた


海外でまだまだやりたい勉強があったのに、お前のせいで帰国する羽目になったと

八つ当たりだが、文句の一つ言ってやりたかったのだ


けれど、今はそう思わない

何も考えず、不良から僕を助けてくれた夏彦

僕の恩人になった彼に抱いていた不満は、全部恩義に変化してくれた


そして同時にその不満は

彼がこれまで、どんな生き方をしていたのか

その疑問へと、置き換わっていった


・・


さて、これは僕らが高校二年生に進級した秋の話

僕と同じように、役目を賜って夏彦の側にいる「巳芳覚みよしさとる」も加えて、今日も三人でのんびり学生生活を送っていた


「あぐあぐ・・・」

「はむっ」


今日のお昼ご飯は、夏彦が紹介してくれたパン屋さんのメロンパン

誕生日に夏彦から食べさせて貰ったそれは、僕の大好物になって・・・気がつけば毎日のように食べていた


「・・・東里ちゃんさ、誕生日プレゼントにメロンパン貰ってから毎日食べてるよね?飽きないの?」

「飽きないよ。夏彦が初めてくれた贈り物だし」

「あぐあぐ」

「本人、その自覚無いと思うよ?」

「うるさい」


そんなこと、言われなくてもわかっている

夏彦は、誰かの誕生日だけではなく自分の誕生日にだって興味がない

自分が十八歳だということも知らずにいたらしい

三年生で縁がある虎徹こてつ先輩と真純ますみ先輩が「夏彦は免許を取る気があるのか?」と聞きに来た際に・・・初めて、夏彦が一浪していたことを知った


本来ならば、彼は今、三年生なのである

僕と覚からしたら、その偶然は都合が良かったけれど・・・一浪した原因が、かなり問題だったりする

一馬かずま先輩みたいに「身体が弱かった」という理由ではなく、夏彦は単純に「馬鹿だった」なのだから


僕らが今通っている高校は、不良高校

普通の高校に押し込めないような問題児や、滑り止めを忘れていたポンコツか、やむを得ない事情がある存在か、馬鹿の中の馬鹿しかいないような高校なのだ

そんな高校でも、類を見ない馬鹿をやっている夏彦は、出会った時は自分の名前が平仮名で書ける程度で、小学一年生ができるような足し算ですら間違っていたのである

むしろ今までよく生きてこられたなと思うと同時に、彼が今までどうやって生きてきたか疑問に思わないわけがなかった


「なあ、東里」

「何かな、夏彦」

「・・・東里の家って、お金をたくさん持っている家なんだよな」

「うん。そうだよ」


流石に、国内有名企業の経営者をやっている覚の家には敵わないけれど、僕の実家もそれなりに裕福な商家だ

なぜ、そんなことを聞くのだろう

お金に困っていたりするのだろうか


「ぬいぐるみの会社って、詳しいか?」

「一応、実家は商売をしている家だからね。なにか捜し物かい?」

「もしかしなくても、彼女へのプレゼントー?」

「そういうのじゃなくて、これ」


そう言いつつ、彼が僕に差し出してくれたのは、ぼろぼろになったぬいぐるみ

形状的にそれは・・・


「東里ちゃん。俺、目がおかしくなったのかな。俺、この形状の抱き枕は見たことあるけど、ぬいぐるみは初めて拝んだよ・・・」

「奇遇だね。僕も今、目の前に衝撃的な物を提供されているように見えるよ」

「これ、メジャーってやつだろ?」

「それはないよ、夏彦」

「絶対ねえよ、夏彦」

「?」


夏彦が抱きしめていたそれは、三十センチ程度のぬいぐるみ

熊とか、うさぎとか、猫とか犬とか定番の動物ではなくて・・・


「チンアナゴのぬいぐるみとか、俺、初めて見たんだけど」

「奇遇だね。僕もだよ」


小さい頃、お爺ちゃんに水族館に何回か連れて行ってもらったことがある

生きているチンアナゴは見たことあるけれど、ぬいぐるみを売っているところなんて見たことが無い


「昔からずっと一緒なんだが、見ての通り。ぼろぼろでな」

「なるほどなるほど。その子を手入れしたいわけだ」

「僕たちに何を聞きたいの?ぬいぐるみを洗うのに丁度いい洗剤?洗い方?」

「作っている会社を調べたくて」

「「うん?」」

「タグの文字が見えなくてな。東里なら、知っているかなって・・・」

「ごめん、わからないや・・・」


流石にぬいぐるみまではわからない

オリジナル商品とかならともかく、だいたい国内メーカーではないし

しかしなぜ製造会社を探そうとしているのだろうか。同じものを買おうとしている?

いやいや、流石にそんなことはないだろう

小さい頃から一緒のぬいぐるみ。簡単に代替わりなんてできやしない


「そうか。覚は?」

「俺もさっぱり。力になれなくてごめんね」

「そうか。じゃあ捨てるしか無いのかな」


そのまま夏彦は教室前に設置されているゴミ箱へ向かう

そしてそのまま、ぬいぐるみを入れ・・・!入れっ!?


「「ちょいちょいちょいちょい」」

「どうした、二人共」

「どうしたもこうしたもじゃないんだけど!?何考えてんの!?」

「何って、古くなったものは捨てないとだろ」

「それは消耗品の類だけでしょ!?ぬいぐるみはまた話が違うの!こっち来て!」


僕と覚は夏彦を引っ張って、椅子に座らせる

なぜ僕らが止めたのか、全く理解できていない夏彦は不思議そうに僕らを見上げてくる


「あのね、夏彦。僕らはぬいぐるみを買い換えるために製造会社を聞いているだなんて思っていなかった。なんで捨てようとするの?大事な友達じゃないの?」

「ボロボロだから、捨てないと・・・」


無表情で、声の張りもないからわかりにくいけれど・・・僕らはわかる

夏彦がぬいぐるみを抱きしめる力を、少しだけ強めたことを


「捨てたくないなら捨てようとすんなよ・・・」

「でも」

「・・・それ、使用済みティッシュと同じように捨てられるか?」

「無理」

「そしてお前は使用済みティッシュを大事に取っておくのか?」

「気持ち悪い」

「だろ?最後に、ぬいぐるみは取っておきたいんだよな?」

「うん」

「じゃあその気持ちに従えばいい。捨てたいと思う物と捨てないといけない物は捨てろ。お前が心で捨てたくないと思うものは絶対に捨てるな。いいな?」

「わかった」

「よし」


おそらくだが、夏彦はそういう「ものの捨て方」も教えられてこなかったのだろう

ますます彼がどんな世界で生きていたのか疑問は深まるが、今は置いておいて・・・

覚のお陰で、夏彦の意志が明確になった今

僕らがやるべきことは一つだ


「夏彦は、そのぬいぐるみとこれからも一緒にいたいんだよね」

「うん」

「わかるよ。僕もね、昔両親にうさぎのぬいぐるみを買ってもらったんだ。どこへ行くにも、何をするにも・・・いつも一緒だった」


座っている彼と、普通に立っている僕は今、目線が一緒

六歳も歳が離れている彼と、こうして目線を合わせる機会は殆どと言っていいほど存在しない


僕より年上なはずなのに、どこか幼い感じがしてしまう友達を前に、僕は騒がしくしている周囲の声に溶け込んでしまうけれど、それでも彼にきちんと届く優しい声音で、彼に語りかけた


「その大事な友達は、もうボロボロで色褪せてしまっているし、よだれの跡もついている。君のそのチンアナゴ君みたいにね」

「東里は、それをどうしている?綺麗にしたくても、綺麗にできない時は」

「僕はたまに洗ってあげているよ。そうだ。夏彦のチンアナゴ君も洗ってあげようよ」

「どうしたらいい?」

「洗剤は僕が用意するよ。夏彦、その子をよく見せて」

「わかった」


チンアナゴ君は夏彦の手から僕の手の中へ

これは、彼が過ごしてきた時間の記録

僕のうさぎさんみたいに、よだれの跡がついていたり、目が外れたあとがあるんだろうな・・・なんて悠長なことを考えていた


飛び散るように存在している、赤茶色の跡を見るまでは


血痕、だよね。これ

転んだとか、そういう感じでついたものじゃない

これは・・・


「どうした、東里」

「夏彦、君は過去のこと、どこまで覚えているんだい?」

「全然」

「このぬいぐるみを贈ってくれた人のことは?」

「さっぱり。それがなにかあるのか?」

「ううん・・・ただ気になっただけだから。あ、ほら夏彦。ここ、穴が空いているよ。ここも一緒に直しちゃおう。ついでだから、綿も新しいのに全部変えちゃおうか」

「できるのか?」

「できるよ」

「凄いな。東里は魔法使いみたいだ」

「そんなことないよ」


魔法使いなら、このぬいぐるみに残った血痕を消し去ってあげられるし、そうなる原因から君を救い出すことができる

けれど、僕はそんな高尚な存在ではないから・・・何もできない

恩人である君に、何も返せないんだ


「帰り、手芸屋さんに寄ろうか」

「そこで何を買うんだ?」

「色々だよ」

「色々か。じゃあ荷物持ちは必要だな」

「お願いするよ」


何を買うかさっぱりわかっていないようだったけど、こうやって協力してくれるのはありがたい話だ


「綿と白い糸、それから補修用の白い布と黒い布。目に使用されている刺繍糸。せっかくだし、大きな桶とおしゃれ着洗剤も買いに行こう。沢山使って、沢山綺麗にしようね、夏彦」

「ああ」


後日、道具を揃えた僕たちはぬいぐるみの手入れを行なった

古くなった綿を抜き、黄ばみ汚れていたぬいぐるみを洗剤につけて丁寧に洗っていく

これは全部覚にやらせた。僕では力が足りないし、夏彦は雑すぎた


丁寧に仕事を終えてくれた彼から、今度は僕へ

破けていた部分を繕って、目立つ部分には新しく布を足していく

ほつれていた目は縫い直し


身体のお直しが完了したら、夏彦に渡して綿を詰めてもらう

丁寧にと言い聞かせつつ、大事な思いを込めて、一つずつ入れてもらった


綿を入れてチンアナゴらしさを取り戻した夏彦のぬいぐるみ

しかし、やはり僕だって裁縫はできるけど・・・プロのそれではない

縫合した形跡や、破けた跡が目立つ部分がいくつかあった

それはぬいぐるみ用のお洋服を作って、それを着せてあげることでごまかした


こうして、何日もかけて、チンアナゴ君は・・・


「これでどうかな、夏彦」

「綺麗でふかふかだ・・・」


元の姿とは言えないけれど、綺麗な姿を取り戻してくれた

満足そうにそれを抱きしめた彼は、嬉しそうにチンアナゴ君へ顔を埋めている


「ありがとう、東里。覚も」

「どういたしまして、夏彦」

「本当だよ。もう手がボロボロだ。今度お礼頂戴」

「わかった」


大事に抱きしめているあたり、本当に大事なものだったのだろう

ボロボロになったら捨てる。それはきっと、この高校に進学して、彼に色々なことを教えてくれている先輩から教わったことなのだろう

けれど、夏彦のポンコツっぷりは流石に彼の計算外だったらしい

そういう予想がつかない部分こそ、一馬先輩が夏彦を気に入る一因かもしれない

頭が良すぎるのも、大変なんだろうな

何もかも予想ができる人生は、結構退屈かもしれない


「おいおい夏彦さんや。床で寝始めるな。せっかくチンアナゴ君綺麗にしたのに、汚すなって馬鹿・・・」

「すぅ・・・」


知識がないことは、数多の苦労を生んでいる

夏彦はそれで沢山の苦労をしているし、現在進行系で知識を蓄えてはいるけれど、まだまだ小学生以下だ

けれど、まだまだ時間はたくさんある


「いいさ、覚。止めなくて」

「でもまた汚れるよ?」

「夏彦、満足そうに寝ているじゃないか」


ずっと無表情だった

けれど、表情が眠っている時は綻んでいて、チンアナゴを抱きしめて眠る表情なんて、満足で嬉しくて

それは夏彦にとって、いつもどおりの眠りだと表情だけでわかるほどだ

きっと、このチンアナゴ君は彼が眠るのに必要なものだったのだろう

年上の友達の、子供らしい部分を垣間見て、僕も頬が緩んでしまう


「いい夢を、夏彦」


床で寝る事には、物申したいことがあるけれど、この子がいなくて全然眠れなかっただろうから・・・今日だけは、許してあげよう

眠る彼の頭を撫でる

何があったかたくさん聞きたいことはあるけど、今は・・・ゆっくりおやすみ、夏彦


・・


あれから、大体十八年

三十歳になった僕は今日もまた、彼の家を訪れてチンアナゴ君のメンテナンスを行う

最近、メンテナンスの回数が異様に増えた

仕方のない話だ。チンアナゴ君は今、新しい友達の相手をしているのだから


「とーりおじちゃん、ちーちゃん、元気になった?」

「元気になったよ」

「ありがと、とーりおじちゃん!」

「どういたしまして」


今年で三歳になった夏彦の娘は、直したてほやほやのチンアナゴ君を抱きしめて、リビングを駆け回る


「危ないぞ、夏鈴」

「ぱぱ!見て!ちーちゃん、とーりおじちゃんのお陰でぴかぴか!」

「そうだな。知っているか、夏鈴」

「何?」

「東里は、ぬいぐるみを直す魔法使いなんだぞ」

「魔法使い!?」

「そうだよ。ちーちゃんを直す魔法使いさ」


得意げに言ってみたけれど、ちょっと照れくさい

彼といつも一緒な小さな友達の手入れを任されることになって、かなり長い時間が経過した


成人して、その友達が「小さな子どもと一緒にいるぬいぐるみ」としての役目を終えた後も、ほつれた身体を直したり、新しい服を繕ったりするなんて、あの時の僕は想像すらしていなかっただろう


夏彦がお父さんになって、チンアナゴ君がその娘の友達をするなんてもっと想像していなかったや


「とーりおじちゃんは魔法使い・・・さゆちゃん!聞いて聞いて!」

「どうした、夏鈴」

「さゆちゃん、なにしてるの?おはな作り?」

「内職だ」

「ないしょく・・・?」


夏鈴がチンアナゴ君と、夏彦がバイトという名目で保護している男の子・・・穂積砂雪君だったかな。彼と遊び始めた頃合いを見計らって、僕らは話を始めていく


「新しいの、買ってあげればいいのに。熊さんとか、定番じゃない?」

「あれがいいんだと。おもちゃ売り場に連れて行って、夏鈴が好きな動物の、新しいぬいぐるみを買ってあげるとも言ったけれど、頑なにあのチンアナゴがいいそうだ」


チンアナゴ君は役目を終えた後、しばらくは夏彦の両親の写真の前に置かれていた

正確に言えば、山吹尊さんと、巽夏澄さん

実の父親と、母親が一緒に写った最初で最後の、唯一残された写真の前でだ


夏彦の戸籍に登録されている父親は実際には養父に当たる人物だそうだ

養父からは人間扱いされてこなくて

養父の目的に利用された夏澄さんは、精神的に参って心が不安定だったそうだ

祖父母に引き取られる十二歳まで、彼は虐待を受けていた

実際の父親は生まれる前に死んでいたとか・・・めちゃくちゃすぎて、言葉も出なかった


それでも彼は真実にたどり着き、それを受け入れて、生きている

ちなみに、チンアナゴ君は彼のお母さんが正気に戻っていた数少ない時間で送られたものだった

さらに余談をするならば、チンアナゴ君についていた血は、夏澄さんのもの

状況は不明だが、少なくともあれは夏彦の血ではなかった


「母さんから贈られたのは思い出せたんだが、購入した経緯がなぁ」

「・・・適当なの?」

「あの人の頭についているあれみたいとか言っていたのは思い出せた」

「山吹さんのアホ毛扱いかい!?」

「っぽい」

「じゃあ、夏鈴も君のアホ毛扱いで愛でているかもね」

「そうかもな」


時間はたくさん使った

けれど、僕は彼の心からの笑顔を見れるような時間を築けて・・・彼もまた、普通に笑えるようになった


「何をするんだい。頭を撫でても」

「ありがとう、東里」

「どういたしまして」


何に対して?という疑問はもういらない

色々なものを全部詰め込んだ「ありがとう」なのだから


「これから忙しくなるだろうけど、まだメンテナンス、頼んでいいか?」

「もちろんだよ。大事な友達の頼みだからね。それにチンアナゴ君は僕も思い入れがあるから」

「助かるよ」


僕らに寄り添い、いつも一緒だった友達が、また小さな友達の側にいられるように

僕は力を貸し続ける

今度はいつになるだろう

夏鈴の為に?それとも、もうすぐ産まれてくる僕の娘の為に、僕は何度でも針と糸で魔法を紡ぐことになるのかな

小さな友達と一緒に入られる魔法を、子供たちの為に

ささやかに、温かい小さな魔法を


いつでも、夏彦の・・・子供たちの側にいながらかけつづけていこう

ぬいぐるみの魔法使いはこれから先、活躍の場が設けられてしまうのだろう

子供たちの笑顔の為に、おやとしてできることを、ぼくなりに沢山やりたいから!

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いつも一緒の小さな友達 鳥路 @samemc

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