第3話:ダンジョン攻略準備と思考の追走
天雅(スライムオナホ)作戦は上手く行くかと思ったが、アイツらが生物であることを失念していたが故に失敗した。
だが、収穫はあった。【勃起無双】のスキルを発動させることが出来れば、ルーカスに迫るだけの活躍も出来る。
「(いや、そもそも)」
原作におけるエレクはどういった時に出現していただろうか? 態々、律義にダンジョンを進んでいただろうか?
「(執事の提案を跳ね除けて、娼婦と一緒にダンジョンに入るという選択もあるが、まず衛兵に止められるだろう)」
死に戻るという仕様上、命の危険は無いかもしれないが、痛いことには変わりない。それに、誰でも入れるなら犯罪者などの温床になってしまう可能性もあるので、素性のチェックは厳格に行われている。
「(だとすれば、エレクはこれらを擦り抜けたってことだ)」
手引きした存在が居たとすれば、ゲーム内でも描写はされるはずだ。
だが、そう言った存在は一切登場しなかったことから、エレク自身の力でフロアボスまでたどり着く方法があるのは間違いない。
「(よし、今の俺はエレクだ。どうすればいい?)」
遺憾ではあるが、今回ばかりはエレクが取って来た方法を真似る為に、奴の思考をなぞるしかない。アイツはいつもどういった時に出現していたのか、ルーカスを邪魔して来たのか。
「(迷宮エレクチオンはダンジョン物だ)」
特定の階層ごとにボスと囚われたヒロインが存在している。この時の戦闘には特殊な条件が存在している。一定のターン数が経過するとエレクが乱入して来て、ボスを撃破するのと同時にヒロインを搔っ攫ってしまうのだ。
「(ゲーム的には緊張感を増やす為の演出なんだろうけれど)」
あるいはレベルを上げ過ぎた場合でも、特定のシーンが見れる様にと配慮した結果かもしれない。俺が注目したいのはエレクが乱入してくるということだ。
「(ボス戦の前にはヒロインがチョメチョメされているCGが挿入されていて、それを見て【勃起無双】を発動させているんだろうけれど)」
スキルが無ければ、エレクは贅肉を蓄えただけの貧弱な男である。そんな彼が、魔物の跋扈するダンジョンを進んでいく方法があるとすれば。二つ。
一つ、魔物と戦わずに逃げながら進んでいく方法。だが、奴らとの遭遇を完全に避けるのは難しい。見つかり難くなるアイテムはあるだろうが、ダンジョンに持ち込める量は限られている。と、なればもう一つの方法だ。
「おぉ! ルーカス様! お帰りになられたのですね!」
「あぁ。持ち物がいっぱいになってしまったからな。誰か、これを買い取ってくれる者はいないか?」
まだ、誰も救い出していないと言うのに。皆がルーカスの帰還を称えていた。
彼が背負っていたバッグからは魔物の素材や、ダンジョン内で発見される財宝等、国の趨勢に興味がない者達にとっても垂涎の品の数々が取り出されていた。持て囃さない理由がない。
「(だが、チャンスだ)」
ルーカスは荷物を整理すればもう一度ダンジョンに潜るだろう。その時、俺は奴の後を付いて行けばいい。アレだけドロップ品を持って帰って来ていることから、レベルも相当に上がっていることだろう。
「(原作のエレクは、ルーカスの後を付けて行ったのだろう。倒した魔物は直ぐにリスポンはしない。ならば、ハイエナの様について行けば安全に進んで行ける)」
もう一つの方法。それは、魔物を殲滅していくルーカスの後を尾行すると言う物だった。勿論、途中で勘付かれる可能性もあるので、商人から補助アイテムを購入して少しでも確立を上げる。
そして、アイツが再びダンジョンに潜るまで俺はジッと動向を見守っていた。
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