第11話:作戦会議

「わ、分かりました。では直接的でない方法を考えましょう!」


 俺が本題を打ち明けるとセレンがグズり始めたので、ケイローが代案を一緒に考えてくれることになった。なんでもするって言っていたのに。

 だが、彼女の気持ちは分からなくもない。恩義があるとしても、出会ったばかりの人物と致すなんて嫌だろう。もしも、俺が彼女の立場だったらこんな風に嫌がるとは思う。


「直接的でない方法。ですか?」

「はい。口にするのは憚られるのですが、エレク様は直接セレン様と致していた訳では無いのですよね?」


 ケイローが彼女の方を見ながら確認を取って来た。実際、俺はヤってはいない。ただ、現場を見て触発されただけだ。


「そうだな。その通りだ」

「でしたら、視覚的な物でも効果はある訳です。セレン様に恥を掻かせないラインで実用的な物を見極めて行きましょう」


 なるほど。と頷いた。それなら彼女に手を出すことは無くなるかもしれない。反動で再び自死する可能性があることは一旦置いておくにして。

 ケイローが部屋に備え付けられていたチェストから幾つか衣装を取りだした。何故、エレクの部屋に女性用の衣服があるのか? という問いに対する答えは直ぐに返って来た。


「こちら、エレク様がメイドに着せていた物の中で特にお気に入りの物ですが」


 衣服と言うには面積が少なく、女性用のインナーかと思ったが違う。

 紺色の生地は胸部から下腹部を覆う程しかなく、身に付ける為に肩紐がある位だった。何よりも特徴的なのは『あるく』と書かれた名入りのワッペン。


「スクール水着じゃないか」

「ほぅ、この衣装はそう言う名前だったのですな」


 最初から人の尊厳のギリギリラインを攻めて行くストロングスタイル。当然の如く、セレンは抗議していた。


「嫌ですよ!? こんなのを着て生活している奴が居たら、痴女ですよ!」

「普段はこの上から外套を羽織って貰えば問題ありません。なんでもすると言ったのですから、貴方も覚悟を見せて下さい!」


 ケイローの眼差しは真剣な物だった。このままでは俺達に待ち受けるのは破滅だし、イアスの件もあるのだろう。

 全員が真剣な面持ちをしているだけに、両手でスクール水着を摘まみ上げている絵面に笑いそうになったが堪えた。


「わ、分かりました。今から、着替えるので覗かないで下さいね」


 言われた通り、俺達は目線を逸らした。が、俺の胸中に一つの疑問が思い浮かんだ。


「態々、コスプレしなくても胸を見せて貰えば良いのでは?」

「いえ、あくまで最終手段に取っておいてください。何度も胸を見てスキルを発動させていたら、いざという時に使えなくなる可能性があります」


 確かに。俺も手で扱いてみたが、エレクの愚息は立たなかった。この体が刺激に慣れてしまっている為だろう。人は刺激に慣れると反応が芳しくなくなる。その点、視覚的情報に関しては俺の感性が良い方向に働いているのだろう。

 一見、ふざけている様に見えるが、スキルの発動トリガーを幾つも用意しておくアイデアには感心した。


「も、もう良いですよ」


 言われて振り返った。冴えない眼鏡女子、スクール水着により強調される身体のライン、恥らう表情……。興奮よりも先に罪悪感がやって来て、顔を逸らしてしまった。


「女性が真剣に奉公しようとしているのですから、ちゃんと見なさい!」


 ケイローが無理矢理俺の顔をセレンの方に向けさせた。

 学校の授業では中学生の頃から、水泳は男女別で行われていた。友人も碌にいなかったのでプールや海に行くことも無い。家族で向かった覚えもない。

 つまり、俺がこの姿でいる女性を見るのは、エロゲを始めとしたサブカルチャー位な訳で。何が言いたいかと言えば、甚く刺激的だった。余計なことを口走る前に必要なことを口にした。


「ステータスオープン」


【レベル】:8

【体力】:30(+30)

【魔力】:00

【攻撃力】:15(+30)

【防御力】:22(+30)

【俊敏性】:03(+30)


「発動はしているのですが、バフの数値が高くはありませんな」


 訳も分からないまま興奮している。ということで、身体の方が戸惑っているのかもしれないし、理性がストップを掛けてしまっているのかもしれない。


「こう、何というか。罪悪感とか、驚きとか、緊張とか。色々……」

「あの。もしかしてですが、貴方は童貞でしょうか?」

「そうだよ。俺は生まれてこの方、1度もヤったことが無いゾ」


 恥辱に塗れた発言を強いられたことにより、最後ら辺の方は声が裏返ってしまった。女子の友達もいなかったし、そう言った機会に恵まれたことは一切なかった。風俗に行く度胸も無かった。


「なるほど、相当に貞操観念の固い方だったのですね。ですが、そういった意味ではむしろチャンスかもしれません」

「チャンスですか?」


 人は自分より失意の中にいる者を見ると冷静さを取り戻すらしい。セレンが発言の意図を確認していた。


「はい。上手く行けば、今のエレク様は今以上にスキルを使いこなせるかもしれません。貴方が童貞のおかげで」

「うるせェ!!」

「非常に重要なことを知れました。これを基に特訓と攻略の足掛かりにして行きましょう。では、早速今からして欲しいことがあります」


 失意の底から引き上げられる。俺としては尊厳に傷が付けられた気分だが、有利に作用してくれるなら凹みすぎる必要も無い。セレンも息を呑んだ。


「まず、ダンジョン内で発動が出来るか確かめて来て下さい。安心できる環境と緊張感がある場所では勝手も違って来るでしょう。ルーカス様のペースを考えると、今日中に第2フロアボスを制覇する勢いで行きましょう」


 俺達に残された時間は多くない。いきなり体を動かすのはきついが、四の五の言っていられない。


「俺もケイローの意見に賛成だ。実際、このシチュエーションがダンジョン内で使えるかどうかを試してみなければ」

「……分かりました」


 衣服を着替える。普通、数日も動かなければ筋肉はかなり衰えるはずなのだが、少し痛む位で問題は無かった。彼らの介抱の賜物だろう。


「外に馬車を停めております」

「助かる」「行ってきます!」


 外套を羽織ったセレンと一緒に乗り込んだ。心強い仲間が出来たことは嬉しいが、同時に滅亡までのリミットも早まった。

 馬車に揺られながら、目的地に着くまでの間。俺達はお互いの持ち物やダンジョンでの立ち回りに付いて確認し合っていた。


~~


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