喪失だらけの世界でも生き抜いていく。読後は胸いっぱいになる最高な物語!

全話読み終えてのレビューです。

この話は全てを失った青年剣士アスターと、命すら自分の物ではない奴隷少女メルが出会い、それぞれの喪失を受け止めて明日を向いて生きて行く。
その道筋を描いた物語です。

メルの視点で描かれる本文は、メル本人の気質そのままの優しく柔らかな文体で、すっと世界に入っていけます。
優しい文体ながらも、メルの境遇は非常に苛烈な厳しいものです。

物語冒頭から主人を逃がすための肉の盾として亡者の只中に取り残される。
アスターと出会い、面倒を見てくれる孤児院に辿り着いたと思いきや、クズな本性を隠している場所だった。

これでもかと畳み掛けて来る苦難。助けてくれたアスターと伸び伸び旅して行くのね、と思いきや彼の方も何やら訳あり。
しかも生来の不器用&無口のダブルコンボでメルをやきもきさせます。

これだけ言うと「え?ちょっとどうなの?」と思うかもしれません。
でも大丈夫です! 世界は厳しく過酷でも、メルに愛情を向けてくれる人が、アスターの抱える傷に思いを寄せる人がちゃんといます。

すれ違いやボタンの掛け違いを繰り返しながらも、何もない少女メルが全てを失ったアスターと共に生き抜いていく今日と、苦難を乗り越えて掴んだ明日の物語を是非、体験してみてください。 かなりおすすめです!

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