第6話 子羊の目覚め 瑞葉
三年生の
「女優さんね」
「晴美」
「ごめん」
台本を持った手を止め、恵人の方を見る慈代。
「本当よ。傷ついたんだから……」
「ごめんなさい」
「慈代を傷つけるなんて、ダメなんだぁー」
晴美が微笑みながら、恵人を指差して言う。
三年生の
「恵人、本当にダメだよ。あの日、慈代、泣きながらうちに来て大変だったんだから」
「え?」
「『家に行ったら、恵人君が瑞葉ちゃんと玄関でキスしてた……』って言って、夜までうちで泣いてたのよ」
「慈代を泣かせるなんてサイッテー。そんなことしてたら
和美がそう言って
演劇部部長の
「みんな集まって」
と集合をかける。副部長の
「今日は二時から台本の読み合わせをします」
そうして今日の練習が始まった。
今度の舞台の台本の読み合わせだった。
その日の練習は六時頃まで続いた。
その日の夜、瑞葉は、慈代とのキスを思い出した。思い出すと、また、どきどきしてきた。何なんだろう……この感情は……今までなかった感情だった。『自分は何か変なのだろうか? 忘れよう、眠って忘れよう。明日になればきっと普段通り、今日はいろいろなことがあって、私おかしいんだ』そう思い、目を閉じて眠った。
夢の中に慈代が出てきた。夢の中でも忘れられない……思い出す。夢の中で、美しい慈代の顔が近づいてくる。慈代がいつも身に付けている心地よい香水の香りに、どこか別の世界へ
慈代の唇が自分の唇に重なる……瑞葉は
身体が熱い。身体の奥から全身にひろがる気持ちよさ……身体が心も興奮しているのがわかった。『どうしよう……これって……』
その夜、瑞葉は憧れなどではなく、本当に彼女を好きになっている自分に気付いた。
第三章へ続く
子羊たちは眠らない 第三章 悲劇に微笑みを
https://kakuyomu.jp/works/16817330653673113286
「子羊たちは眠らない」
*これまでのすべての章*
子羊たちは眠らない 第一章
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子羊たちは眠らない 第二章
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子羊たちは眠らない 第三章
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子羊たちは眠らない 第四章
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子羊たちは眠らない 第五章
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子羊たちは眠らない 第六章
子羊たちは眠らない 第二章 子羊の目覚め KKモントレイユ @kkworld1983
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