その公女は、M.O.V.を駆る。

恒星間航行を成功させた人類が迎えたのは、剣と魔法ならぬ剣とメカのモザイク文化。
惑星ザルドの公女ロクサーナは人型巨大兵器M.O.V.(ムーヴ)ブリガンダインを駆り、奪われた祖国に思いを馳せる―

SF好きの方々が大切にする設定、もちろん練り込まれています。成し遂げた恒星間航行が不自由なのは何故か、剣や軽火器と巨大人型兵器が同じ星に同居するのは何故か。細かいところまで説明が為されています。

でもそれ以上に私が推したいのは、キャラクターの解像度です。序盤の立ち回りではやや冷徹な印象を受けるロクサーナですが、事が済めばベリータルトに頬を緩める年頃の女の子。「キモ可愛い」芋虫型愛玩機械C.L.A.U.-1=クロちゃんを溺愛し、ブリガンダインに搭載されたAI「ヴァージル」の下手な冗談に呆れ、どこで覚えたのかわからない殺し文句に動揺します。普段の彼女が見せる何気ない表情もまた、この作品の魅力の一つと言えましょう。

SF好きの方にはもちろん、キャラクターを愛でたい、推したいという方にもお勧めできる秀作です。

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