ウェーブ&ムーブ〈惑星テクトリウスの異邦人〉

保紫 奏杜

第一章〈始まりの章〉少女とM.O.V.

序 章 宇宙の波



 宇宙にはウェーブがある。


 アンドロノフAホフマンH波の発見より百余年、人類はついに恒星間航行を成功させた。しかし、AH波の大きさに依存する移動手段は、文明の拡大というよりもむしろ分裂という形をとった。


 AH波は、人類の意図とは関係なく、時に荒れ、時にぐ。その予測は可能になったが、発生を操る力を人類は持ち得なかった。人類が初めの植民惑星に降り立ってから一千年以上経った今でも、それは変わっていない。


 大規模で安定的な輸送がされない以上、植民惑星に降り立った入植者たちは、持ち込んだ僅かなテクノロジーを元に、現地で新たに文明勃興ぼっこうはからねばならなかった。その結果、新旧のテクノロジーが同居する、剣と魔法ならぬ、剣とメカのモザイク文明が各地で展開されることとなったのだ。


 そんな辺境植民惑星の一つ、テクトリウスに、一つの廃鉱があった。かつては初期入植者ファウンダーズの古参氏族の一つ、カイレン氏族の首都ファル・ハルゼの発展を支える鉄鉱山であったが、二百年を越える頃から産出量が低下し、放棄されていたものだ。


 そして今、一時は荒れ放題だった廃鉱を再利用している者たちがいた――。


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