俗世と隔絶された霊峰にひっそりと佇む隠れ里。そこには質素な暮らしを続ける一族がおり、贖罪とも言うべき使命を帯びて妖魔と戦う日々を送っていた。
千鶴は齢十四、まだ少女と言える年齢ながら身の丈ほどもある長尺太刀を操り、常人ならざる身体能力と剣技で魔を滅する『夜叉巫女』。これは彼女の復讐と成長の物語である――――
どこか物悲しく静かな雰囲気で進められる物語は和風ダークファンタジーの傑作と呼ぶに相応しいもので、無数の蛍が舞い踊る夜の滝壺、朝靄と障子一枚隔てた自室で巫女たる装いを整える所作、丁寧な描写のおかげで読者が想像するまでもなく映像として浮かんできます。
これに輪をかけて素晴らしいのがキャラクターの造形です。不愛想で自罰的ながら姉への思慕が隠し切れない千鶴、天真爛漫で誰からも愛される天然巨乳娘・胡鞠、見た目通りの剛勇無双も台無しのセクハラおっぱい星人・剛羅。彼ら彼女らの掛け合いは、ともすれば重くなりがちな舞台に涼風を吹き込んでくれます。
この愛すべきキャラクター達が織り成す静かな物語をしばし楽しめるのかと思いきや、陰謀渦巻く里の中には既に魔の手が……!
現在物語は一章終盤、里も千鶴も絶体絶命! というところです。静謐さの中に激情をはらんだ和風ダークファンタジーの傑作、ぜひご一読ください。