恋の虚しさと儚さに心浸して、真実の愛を求める物語

人を本気で好きになればなるほど、相手の心が自分から離れていることが分かってしまう事があります。
目を背けようとしても、残酷なほど心が気付いてしまう。

冷たい雨を背景にこの物語は静かに、そして狂気にも似た冷たさで、人を愛する事の難しさや儚さを教えてくれます。

心離れていく彼氏の存在を感じながら、その寂しさ、虚しさからSNSで繋がった彼以外の男と体を重ねても、どこか満たされない空虚感を感じ、男の甘い言葉にも空々しさを感じる主人公。

物語の中で主人公の女性は愛情について、このように語ります。
「どちらかが重いから、片方は浮くんです。シーソーみたいに。平等なんか、どこにもない」
これほど恋愛の不条理と真実を表した言葉はありません。

恋愛をしていて自分と相手との想いの差を感じ「あれ?自分だけ?」と思うことは誰しも経験があると思います。

恋の虚しさを知っていても確かな愛を求める心がある。
降り続く冷たい雨が主人公の心理と重なり、恋というどうしようもない沼を描いた見事な良作でした。

(「沼らせ男/沼らせ女」 恋愛ショートストーリー特集/文=カフカ)

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