多様化した社会における共通性

実際の定義はともかく純文学を私小説、または私小説的なものとする向きがある。
では純文を純文足らしめる要素とは何か。
剥き出しの装飾品である、ということになる。
「赤裸々に描かれた芸術的な作品」と言い換えてもいい。
人や社会の本質をえぐる作品もあるだろう。

本作は二つの要素からこれを満たしているとしておく。
一つは普遍性を持った設定。
一つは普遍性を持ったワード。
個人が個人足り得る多様化した社会は必然共通項が少なくなる。
視点は様々であり多くの価値観が存在する。時計の針は戻らない。
作者の人や社会を見る視点が表れた、巧みな短編としてお薦めしたい。

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