現れた

 ネット普及以前からぽつぽつと知られていた或る特定地域の怪奇がライターの手で掘り起こされていく。
 単独で起こっていたかにみえた奇異や行方不明者にはある共通点がある。場所。見たもの。笑顔。収集するうちに不可解と恐怖が増幅していく手法。
 常々、映画「リング」の中の呪いのテープの再生場面がいちばん怖いと云っているのだが、その趣きが映像ではなく、文章でおこされている。
 卓越した描写力と構成力、著者本人までホラー味を投げかけてくるエンタメ性。
 ダムを眺めていると底から「オーイ」と呼ばれ、松茸狩りに行くと樹々の上から「オーイ」と話しかけられた、そんな幼少期の記憶まで甦ってきた。

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