悲しき自動人形の足掻きは愛を掴むのか?

舞台は今よりも少し未来。人工的に作られた「自動人形」という存在一生。
彼を作り出したのは、嘗て彼を愛していた女性。

一生は現実世界を彷徨いながら、自分の存在意義を問い続けます。オリジナルが持つ記憶と、新たに積み重なる記憶。オリジナルから一人の人間として生きて良いのか、如何にして生きていったら良いのかという葛藤。それは、身震いするほどの寒さを感じる孤独です。

そんな孤独が癒やされる日が来るのか。

悲しい存在「自動人形」の人生の旅路を綴った物語です。

クローンとか、遺伝子操作とか、SF小説によく出てくる言葉なのですが、一生の存在は「もう少し未来には本当に存在しそう。いや、何なら既にこの世界に紛れているかも知れない」と思わせるほどリアルです。それは、脳科学など人体に関する記述に専門的な裏打ちがあるからでしょう。また、登場人物達の葛藤も、様々な哲学的視点から描かれているので深みがあります。

そういった重厚さが、この物語を単なる夢物語にさせないのです。

物語は壮大な舞台に飛び立っていきました。その行く末を、共に追いかけませんか?

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