異世界召喚されて役目を果たした男、 今度は美少女化する
当時16歳の高校生だった笹該当馬(ささがいとうま)は、ある日突然、一方的に異世界へと召喚されてしまう。
その世界では、魔王ングブドによる侵略を受けており、人間の命運はもはや風前の灯という状態であった。
だからこそ、その状況を打破するべく女神シェンヘスは、魔王を打ち倒す唯一の方法とされる術式の適合者を召喚したのだが、それによって連れてこられてしまったのが笹該当馬ということである。
事前の承諾もない一方的な異世界召喚に当初は憤慨していた笹該当馬ではあるものの、その世界で何人もの親しい人間ができるにつれ、その者達を見捨てることができないということで、術式の発動に協力することとなった。
とはいえ彼自身はあくまで術式を発動させるために必要な触媒でしかなかったため、何か特別な能力も努力も必要なかった。大変だったのは、彼を守り、術式を発動させるために尽力した者達であった。
中でも女神シェンヘスは、力のほとんどを使い果たし、女神の搾りかす(シエナ)となって地上に残ることに。
しかしこれらのことはすべて10年以上前に起こったことであり、今回の本編には関係ない。
魔王が退けられ平和を取り戻したものの女神シェンヘスが力のほとんどを使い果たしたことで元の世界に戻る術を失った当馬は、トーマとして、平穏な暮らしを送っていた。世界を救うことに協力したことの対価として、『生涯にわたって生活に困ることがない』という補償を得て。
それなのに、30歳を目前に迎えたある日の朝、トーマは自分の体が11歳から12歳くらいの少女のそれに変化してしまっていたことに気付く。これはどうやら、次元の壁を超えた時に彼の体にかかった負荷が形を変えて表れたものらしい。
「いまさらもう何が起こったって驚かねーよ……」
呆れながらも現状を受け入れるしかないことは承知していた彼は、こうして美少女として新たな人生を送ることになったのだった。