夏
人魚の木乃伊
深夜、とある寺。
「はい、侵入成功っと」
髪がぼさぼさで無精ひげの男が閉じられていた門を開ける。
門には
「さぁて、宝探しといきましょうか」
男は寺の坊主達が寝静まっていることを、
男は目星を付けた部屋に入る。
人形が
その中には桐の箱に入った異形の
「これが本物の人魚の木乃伊か。いやぁ、偽物も多いけど、これは本物だねぇ」
男は目を輝かして桐の箱ごと木乃伊を盗み出して、闇に消えた。
次の日。
寺の住職は朝一番に人魚の木乃伊の所在を確認することとなっている。
「な、ない! 人魚の木乃伊がない!」
住職はすぐに警察に連絡した。
警察は人魚の木乃伊というものに半信半疑だったが、窃盗ということで捜査をしてくれることになった。
「防犯カメラとかはないんですか?」
「すみません、付けてないです」
「付けた方がいいですよ」
「はい……」
足跡や犯人の痕跡を探したが、全く証拠が残っていなかった。
まるで、人魚の木乃伊が独りでに消えてしまったように。
警察はお手上げという感じで、引き上げてしまった。
住職は藁にもすがる思いで陰陽師を名乗るトゥイッターにDMを送った。
次の日。
DMのやり取りをしていた雨月という青年と陰陽師の化野白夜という者が尋ねてきた。
門を見た瞬間、化野白夜は言った。
「ここで呪をかけているな」
「しゅ?」
「まあ魔法みたいなものです」
白夜は、侵入者の男が進んだのと同じルートで、人魚の木乃伊が収められていた部屋へ向かった。
「式が使われている」
「式神を使った、呪を唱えた、ということは分かるのですが、それが誰のものなのか特定は出来ません。巧妙に隠されています」
「そんな……、あれはうちの秘蔵なのに……、先祖代々受け継がれたもの……」
「しかし、何故、人魚の木乃伊なんぞを狙ったのだ……」
「呪物コレクターとかですかね?」
「これくたー?」
「収集家という意味です」
「そんなものを集めて、どうするのだ?」
「白夜様には分からないだろうけど、世界には色んなオタクがいるんですよ」
「それで、この後どうする?」
「これだけ痕跡も残されていないとなると、難しいですね。人魚の木乃伊を探しているというポスターを現世と幽世に貼りましょう。誰か情報を持ってきてくれるかもしれません」
「分かりました……」
現世、某所。
寺が作ったポスターを見て、ニヤリと笑う男がいた。
けもみみ陰陽師 夢水 四季 @shiki-yumemizu
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