第6話 秋田食堂


 何の店だろう……かと思いつつ、屋根まで届く大きな看板を見上げると、片足立ちの大きなニワトリが描かれており、その腕にはしっかりと卵が一つ抱えられている。そこには、「秋田食堂」という名前が付けられていた。


 その看板のデザインは目を引くもので、シンプルな名前も何とも言えず興味をそそられる。初めて訪れる店だからこそ、何を食べられるのか楽しみで心躍っていた。


 しかし、また入れないのでは……と一瞬不安がよぎった。そっと近づき、入口のガラス越しに覗いてみる。


 あっ……空席がある。


 思わず嬉しさが込み上げてきて、心が踊り出すようだった。引き戸を開けて中に入ると、店内は十席ほどのカウンターと真ん中に調理場があり、まるで狭いラーメン屋のような雰囲気だった。お客さんは五人ほど座っており、どんぶりを持って昼飯をかき込んでいた。厨房に立つ女性から声をかけられた。


「良かったら、どうぞお入りください」


 挨拶が心地よく届き、可愛らしい小鳥のような笑顔に招かれて店内に進む。自分より少しだけ年上らしい美しい女性だ。目が大きく二重まぶたでエキゾチックな雰囲気も感じられた。


 一人、二人、三人と食事を済ませた男性たちが出て行くと、立ち代わりにどんどんお客さんが入ってきて満席になる。こんな裏通りなのに、けっこう繁盛する飲食店らしい。それは、この店が地元の人々に愛されている証拠だと思った。


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