第5話 ランチ難民


 ひとしきり歩き続けると、視界にオフィスビルが現れ、雰囲気が変わってくる。一番大きな建物は赤い三角屋根のランドマークだ。


 一瞬、スキージャンプ場を思い起こさせる高層ビルを横目に、駅前のロータリーを渡りアーケードを見上げる。直線に約200メートルほど続いているだろうか。少しずつ、奥へと進んでみる。


 どこからともなく音楽が流れてきて、駅弁と蒸気機関車の走り抜ける時報がランチタイムを告げる。


 平日の昼下がりなのに、人々が行き交っており、暗黙のルールに従って左側通行で店を眺めるのがやっとだ。アニメやマンガグッズなどのマニアックな店も多いが、国際色豊かな店がごちゃごちゃと集まっていて面白い。さすがに「ぶらり散歩のワンダーランド」と呼ばれるだけある。そろそろお腹が空いてきた。


 クレープ喫茶や一口餃子の専門店、スープカレーの店を見つけたがどこも満席だ。仕方なく馴染みの牛丼やファーストフードの店を覗いてみるがダメだった。自分の職場が近いのに、ランチ難民の町だということを忘れていた。


 最近はビール会社や大学からの転入生が増えており、この街は魔界の法則に従っていた。午後二時までは大きな口を開ける鯉のように、昼飯を求めてサラリーマンが彷徨っている。路地裏に立ち並ぶラーメン屋も小規模で入れなかった。


 ああ、残念。仕方なくアパートまで戻ろうか。歩けば20分ほどだ。家に行けば、好物のチキンラーメンくらいは食べられるだろう。


 しかし、裏通りから帰ろうと諦めかけた時、街はずれに一軒家の古いお店が見えてくる。眩しいような電飾が天から降り注ぐ光に見えた。お腹が空いてグーと鳴り、思わず店先に駆け込んでしまう。


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