他人にノーと言えない性格が災いし、毎日のように訪問詐欺に悩まされるサラリーマン。そんなある日彼の家を訪れたのは詐欺師ではなく隣の部屋に住む少年。
わずか千円の報酬で主人公の部屋の用心棒をしてくれるという少年に、一瞬新手の詐欺を警戒する男。しかし少年は約束通り部屋を訪れる訪問販売員を追い返してくれた。この出来事をきっかけに交流を始める男と少年だったが、ある日男の携帯に少年が交通事故にあったという報せが届き……。
詐欺を扱っていることもあり後半の意外な展開が印象に残る作品ですが、そればかりではなく主人公と少年が友情を深めていく過程が実にいいんですよ! 短い会話を通じて、独身のサラリーマンと育児放棄された少年という年齢も立場も全然違う二人が友情を育む様子がしっかり書かれていて、これがラストに効いて来るんですよ。
短いながらもしっかりとサプライズが用意されていて、じんわりと胸に沁みる作品に仕上がっています。
(「騙し騙され詐欺の世界!」4選/文=柿崎憲)
とことん押しに弱く、故に断れず、百件近くもの詐欺に遭い続けている主人公の男。そんな彼の元を訪れたのは、隣の家に住んでいるという、バットを持った少年でした。
男はいっそ騙されたつもりになって、その少年を「用心棒」として雇い、押し売りの詐欺師たちを追い払ってもらうことにしますが――。
タグや紹介文から察せられるように、この話の結末は、決して「ハッピーエンド」とは言えません。どこか優しく柔らかい文体と、主人公と少年のほのぼのとしたやりとりの裏で、読者はじわじわと「嫌な予感」に苛まれます。
そして明かされる真相の果てに訪れるものが、ハッピーエンドでないとしたら、一体なんなのか。
それは恐らく、読者の感じ方次第。ですが私は、こう思いました。
――「騙されたけど、救われた」。