騙し騙されても、救われたひとがいると信じたい。

 とことん押しに弱く、故に断れず、百件近くもの詐欺に遭い続けている主人公の男。そんな彼の元を訪れたのは、隣の家に住んでいるという、バットを持った少年でした。
 男はいっそ騙されたつもりになって、その少年を「用心棒」として雇い、押し売りの詐欺師たちを追い払ってもらうことにしますが――。

 タグや紹介文から察せられるように、この話の結末は、決して「ハッピーエンド」とは言えません。どこか優しく柔らかい文体と、主人公と少年のほのぼのとしたやりとりの裏で、読者はじわじわと「嫌な予感」に苛まれます。
 そして明かされる真相の果てに訪れるものが、ハッピーエンドでないとしたら、一体なんなのか。
 それは恐らく、読者の感じ方次第。ですが私は、こう思いました。
 ――「騙されたけど、救われた」。

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