流行りの詐欺にはご用心
雨宮羽音
流行りの詐欺にはご用心
「それで……今回は何を買わされたの」
家具の少ない簡素な部屋。
そこはとあるアパートの一室。
頬の痩けた、くたびれている男の部屋だった。
「この……ブレスレットです……」
男は質問に答えると、アクセサリーの収められた安っぽい箱を机に取り出した。
対面しているのは、使い古されたコートを羽織る初老の男性。刑事だ。
「あんたも懲りないねぇ……これで何度目だい?
こんだけ世の中で、詐欺だ! 詐欺が流行してる! って言われているのに……今時どうやったら100件近く騙くらかされるんだか」
刑事の言う通り、今、世界は詐欺に溢れていた。
街を歩けば広告の半分は偽物だ。客引きなど9割が詐欺師である。
そこまで分かっていても騙される人が後を絶たないのだから、人間とはなんと愚かな生き物だろうか。
そしてこのくたびれた男もまた、そんな愚かな人間の一人である。
「とにかく、次は気をつけなさい」
刑事はそう言って部屋を後にした。
男は一人、寂しい部屋の中で宙を見つめる。
(私は何をしているのだろうか……)
齢40を超え、独り身。
未だにパッとしない役職無しのサラリーマンである。
彼はとにかく押しに弱かった。流されるように生きてきて、そして騙され続けてきた。
借金こそ無いものの、親の生命保険で得たお金と貯金は底をついてしまった。
このまま変わらぬ生活をしていれば、自分が破滅するのは目に見えていた。
(今のままではダメだ……私はノーと言える人間になろう!)
今更ながらの決意に、その時、水を差す様に玄関のチャイムが鳴った。
不意の来訪者に対し、男は何の躊躇も無く入り口の扉を開いてしまう。
「こんにちはー! ○○会社の××と申します!」
スーツを着た訪問販売員。
一瞬で分かった。これは詐欺だ。
恐らく刑事が帰るのを待っていたのだろう。
「あの、困ります。
今はお金が無いので……」
「大丈夫です! ウチの商品はリーズナブル! 分割払いにも対応していて──」
「本当に……勘弁してください……」
そこから諦めて帰ってもらうのに2時間を費やした。
終わった頃には汗でびっしょりになっていたし、慣れないことをしたので精神的にもすり切れた。
だがわずかなインターバルを置いて、チャイムは無慈悲にも新たな鳴き声を上げる。
次の刺客が訪れたのだ。
それから数日。
チャイムは毎日、ひっきりなしに鳴り響いた。
地獄のような日々だが、男が居留守を使うことは無い。
それが何故かと聞かれれば、彼がそう言う人間だからと答えることしかできなかった。
来客があればもはや反射的に迎えてしまう。
それがこの男だった。
そんなある日。
扉の向こうに立っていたのは、いつもとは違う様子の人物だった。
「…………」
黙って男を見上げていたのは、キャップを被った小学生くらいの男の子だった。
思わず小首を傾げてしまう男に、少年はぶっきら棒に言い放った。
「おっさん! 困ってんだろ?
俺がなんとかしてやるよ!」
あまりに突然の出来事で、男はしばらく惚けてしまう。
「君、どこの子だい?
何とかするっていったい……」
「どこって、隣に住んでるだろ!
毎日毎日、壁が薄いからため息が聞こえるんだよ!
だから俺が助けてやる! おっさんのウチに来るやつ全員追い払ってやるよ!」
見れば少年は木製のバットを手にしていた。
短パンに半袖、見るからにわんぱく小僧といった風体である。
「だからさ、その……小遣いくれ!」
「ああ……君も私を詐欺に合わせる気か……」
男は心の中で大きなため息をついた。
こんな子供まで悪事に手を出すとは、本当に世も末だ。
「詐欺じゃねーよ!
ウチの親ケチだから、小遣いくれないんだ! こんなんじゃ駄菓子も買えねえ!」
「いくら欲しいんだい?
10万か?
100万くらいか?」
「マ……ン?
それってどんくらい? 大金か?」
「……1000円くらいか?」
「すげえ! そんなにもらったら、毎日ガム買っても余るじゃん!!」
男は思わず鼻で笑ってしまった。
なんと可愛い詐欺師だろうか。
今まで数千万という額を貪られてきた彼にとって、その少年は実に微笑ましく思えた。
「わかった。
じゃあ1000円で君を買おう。
これは大金だから、受け取ったらすぐに帰って、大事にしまっておきなさい」
「お、お、おう!
えっ、ほんとにいいの!?
わーい! やったぁ!!」
男がお札を渡すと、少年は浮かれた様子で隣の部屋へと消えていった。
男は不思議な満足感を覚えていた。
あれだけ喜んでもらえるならば、詐欺に合うのも悪くない。
そんなことを思いつつ、男は部屋に戻り仮眠を取った。
今日は休日だ。
どうせすぐにチャイムが鳴って、起こされてしまうだろう。
だが疲れていたので少しでも体を休めたかった。
目を覚ました時、時計を確認して驚いた。
眠っていたのは5、6時間。すでに日が暮れ始めている。
休日の日中に、これだけ眠り続けられるというのは奇跡だった。
男はおずおずと玄関の扉を開け、アパートの廊下を確認する。
するとそこには、先程の少年がヤンキー座りで道を塞いでいた。
子供ながらに鋭い目つき、そして手にしたバット。
男は声をかけずにはいられなかった。
「君、何してるの?」
「何って、用心棒」
「なんでそんなこと……」
「だっておっさんにお金もらったろ?
約束は守るよ」
「へ、へー……ちなみに、今日は誰か来たのかい?」
「20人くらい来た。
全部追い払った!」
少年はバットをぶんぶんと素振りして見せた。
子供は怖いもの知らずなのだ。
「すごいね。
でも暴力はいけないよ」
「なんで? だってみんな悪い奴らだろ?」
「悪い奴らでも、怪我をさせちゃだめなんだ」
「じゃあ用心棒やめる?」
「やめないで」
男は食い気味に答えた。
「おっさん、難しいこと言うね」
「ごめんよ。
でも、できれば暴力は無しで。君が飽きるまででいいから続けてくれると……その、助かるかな」
「……わかった!」
少年が屈託の無い笑顔を浮かべたのを見て、男も釣られて笑顔になった。
男が素直に笑ったのは、それが久しぶりだった。
それからというもの、男の家に詐欺師は来なくなった。
全て少年が追い返したのだ。
休日は一日中。
平日は男が仕事から帰る頃には、少年は廊下に鎮座していた。
「おかえり」
「ただいま」
いつのまにかそんなやり取りが当たり前になっていた。
すっかり顔見知りになった二人。その日も男が帰宅すると、少年はガムをプーっと膨らませて男を迎える。
「君、いつもこんなことをしていて、親は何も言わないのかい?」
「だって二人とも、ほとんどウチにいねーし!」
「ご飯とかはどうしてるの?」
「帰ればコンビニ弁当があるもん」
その瞬間、少年のお腹がぐうと鳴った。
「……よかったら、ウチでご飯食べるかい?」
「えっ、いいの!?」
とんとん拍子で話が進み、少年を部屋へと迎え入れる。
ご飯といっても、レトルトや冷凍食品の類しか用意は出来なかった。
今晩のメニューは、甘口のカレーである。
「俺、ハンバーグが食べたい」
「わがままだなぁ」
悪態を吐きながらも、男はハンバーグを温めて出してやる。
割りかし豪勢になった食卓を、二人で挟んで夕食とする。
不思議なもので、誰かと共にする食事はいつもより美味しく感じられた。
不意に、チャイムが鳴る。
久々の音に男はびくりと背筋を震わせた。
「俺がでるよ」
そう言って外に消えた少年は、ものの数分であっさりと帰ってきた。
「誰だった?」
「いつもの感じと同じ人。
追い返した」
「すごいな君は。いったいどうやって……」
「親が警察だって言うと、だいたいすぐ帰るよ」
「え、君の親は警察だったのか」
「いいや、違うと思う。
なにしてるかは知らないけど……」
「……嘘はいけないなぁ」
「なんで?
じゃあ用心棒やめる?」
「やめないで」
男は食い気味に答えた。
「だけど、あまり嘘はつかないほうがいい。
いつか自分が痛い目に合うかもしれないからね」
「あいかわらず難しいこと言うね。
俺もわがままだけど、おっさんも大概だな」
「自分で分かってるなら直しなさい……」
「……分かった」
少年はつまらなさそうに口を尖らせたが、実に素直であった。
数ヶ月が過ぎた。
少年の用心棒は続き、今では男の家に入り浸るようになっていた。
誰かの訪問があれば、少年が追い返す。それが当たり前になっていた。
「ゲームを買ってきたぞ」
「すげえ!
でも俺、これじゃ無くてRPGがやりたい!」
「わがまま言わない。
二人で遊べるやつじゃないと、私が見てるだけになるだろう」
「そっか、じゃあしょうがないね。
はやくやろうぜ!」
「遊園地行ってみたい!」
「なんだ、行ったこと無いのか?」
「無いよ! ウチの親ケチだもん!」
「しょうがないな……特別だぞ!」
「おっさん!
この宿題わかんねえ!」
「君、ちゃんと授業を聞いてるのかい?
こんなの簡単だろう、どれどれ……」
二人でいると、時間が経つのが早かった。
いつしか詐欺師は家を訪れなくなり、どうやら男の家は、彼らのブラックリストに載ったようだ。
そしてあっという間に2年が過ぎ──少年は今年で、小学校を卒業する歳になっていた。
「君のご両親、卒業式には来てくれるのかい?」
「どうせ来ないよ……授業参観も運動会も、何にも来てくれないし……最近、ウチにいる時も喧嘩してばっかり」
「そうか……君にこれを渡そう」
「……なに、この紙」
「私の携帯番号だ。私が仕事に行ってる間でも、もし困ったことがあったら連絡していい。
卒業式には……私が行こう」
きっと自分に息子がいたら、この少年のように可愛かったのだろう。
そう思えて、男にとって少年は、いつのまにかかけがえのない存在になっていた。
突然の電話だった。
卒業式を間近に、滅多に鳴ることのない男の携帯が震えた。
『子供が車に轢かれました。
一刻を争う重体です。
連絡先が分からず、この番号にかけたのですが──』
相手は医者だった。
男は何も言わずに会社を飛び出し、病院に向かった。
町の奥にある小さな個人病院。
随分と古く、中には他の患者が誰もいない。
寂れに寂れたといった感じの場所だ。
「他が急患で埋まっていて……こんな小さな病院に運ぶしかありませんでした。延命措置も満足に出来ません……」
医者の話などには耳も貸さず、男はガラス窓に齧り付くように中を覗き込む。
薄いガラスの向こうでは、少年がベッドで眠っていた。人工呼吸器やら何やらにまみれ、胸のあたりにたくさんの管が継がれている。
巻かれた包帯は赤く血に滲んでいた。
「助かるんですよね!?」
「……心臓が破れています。このままでは一日と保たない。
ですが移植のドナーを探すのは、心臓では困難でしょう……」
「なんでこんな……!」
「……親御さんの連絡先を知りませんか?」
「隣人ですが……顔も見たことが無い……」
「そうですか……もし会ったら、すぐに伝えてあげて下さい」
「…………」
なす術もないまま、自宅へ帰る。
隣の家は当然のように無人だった。
(どうすればいい……私に何ができる……)
考えても答えが出るはずは無かった。
時計が秒針を刻む音が、やけに早く感じる。
時間が無い。このままではあの子が死んでしまう。
その時、チャイムが鳴った。
酷く久しぶりの音色だが、今は何の反応も示せない。
しかし、無視をしても仕切りに鳴り続ける呼び鈴に、とうとう男は重い腰を上げた。
「あっ、どうもどうも、わたくし◇◇会社の者ですが……」
スーツ姿の女だった。
「帰れ。
話を聞く気は無い」
「ああっ、お待ち下さい! 我が社の商品は貴方が必ず御所望のものですから!」
閉めようとした扉を、女は強引にこじ開けて玄関へと入ってきた。
「ふざけるな! 警察を呼ぶぞ!」
慣れない怒気を乗せて、男は叫んだ。
しかし女はそれを意に介さず、ニタリと笑顔を浮かべて見せた。
「今日ご紹介するのは他社では決して御目にできない商品。
人は誰だって死ぬのが怖いでしょう?
そんなお客様のために、わたくし共が販売するのはすなわち──『命』」
女の口角が釣り上がり、浮かべられているのはもはや笑顔では無く狂気に見える。
彼女は持っていたアタッシュケースを胸に抱え、慎重に開いて中をあらわにした。
ドクン。
と、脈打つ音がした。
それは男の胸からでは無く、ケースの中に収められた剥き出しの心臓のものだった。
「なんだ……これは!?」
「ですから言ったでしょう……『命』……で御座います」
ありえない。
男はそう思った。
人の臓器が……ましてや心臓が、そんな剥き出しで扱われるはずが無い。
しかも動いている。
突拍子無さを超えて、うす気味の悪さがじわりと湧いてくる。
「ご契約頂ければ、貴方がいつ死んだとしても変わりの『命』をご提供します。
それだけでは御座いません!
もしも貴方の大切な人が亡くなったとしても、貴方の代わりにその方へご提供することも可能で御座います」
「そんな馬鹿げたことが……」
「お値段たったの5千万円!
家を買うより命を買いましょう!
生きていてこその人生です!」
「そんな大金あるわけ無いだろう!」
「大丈夫! 死亡保険と同時に契約して頂くだけで、実質タダで御座います!!
こんなに素晴らしい買い物が他にあるでしょうか? いいえ、ありません!!」
詐欺だ。
もはや詐欺などと呼ぶのも馬鹿馬鹿しい。
それくらいに全てが破綻している話だった。
「……帰ってくれ。そんな与太話に興味は無い……」
「そうで御座いますか。それは残念……」
女はあっさりと引き下がった。
ケースを閉じ、踵を返す。
「たった一度の人生、貴方が後悔をなさらないよう願っています」
──後悔。
その言葉を聞いて、男の脳裏によぎったものがあった。
失いたく無い少年の姿だ。
「……待ってくれ! もし契約をしたら、今すぐにでも届けられるのか……その、『命』を」
「もちろんで御座います!
我が社の社訓は迅速、丁寧──」
「御託はいらない。契約しよう。
だからすぐに届けて欲しい病院がある……」
「ありがとうございます!
ありがとうございます!
ではこちらに捺印を──」
女が帰った後、男は病院に向かった。
道中、様々な思考が頭をめぐる。
(何がノーと言える人間になるだ……結局、私は何も変われていないじゃないか……)
病院に到着し、中に入る。
するとそこに人の気配は無く、ただ寂しい空気で満たされているだけだった。
重い足取りで奥へ奥へ。
少年が居たはずの部屋は、すでにもぬけの殻になっている。
「……ははっ」
男の口から思わず小さな自嘲が漏れた。
帰りの道端で聞いた話、あの病院は半年も前に閉鎖されたらしい。
冷静になれば、外観も内装も、機材すらも、全てが最初から怪しかった。
自宅にたどり着き、隣の部屋を確認する。
表札は無くなり、部屋の中はまたもやすっからかんだった。
完全に騙された。
というより、そもそも信じてはいなかった。こうなることは分かっていたのだ。
それでも、男はあの時した選択を後悔していなかった。
もし本当に少年が事故に遭っていたとして。
もし本当に契約が本物だったとして。
大切なものの為に下す選択は、これ以外に無かったのだから。
「詐欺で……君が生きていて……本当によかった……」
男は人としての矜恃を貫き通したのだ。
卒業式。
男は参列者の中に忍び込み、式を見守った。
わずかな期待を胸に足を運んだが、少年の姿は当然のように見当たらなかった。
帰り際、早咲きの桜が舞う校門で男は呟く。
「卒業……おめでとう」
それから20年が過ぎ──。
男は倒れた。
心臓の病気だった。
家族は無し。
身寄りも無し。
おまけに膨大な借金を抱えている。
意識を失う時、もはや未練は何も無かった。
そのまま、終わりを迎えると思っていた。
だが、目が覚めた。
男は病室に居た。
そばにあるカレンダーを見るに、数週間は経っている。
「やっとお目覚めかい……」
「刑事さん……久しぶりですね。
なんで貴方が?」
「聞きてえのはこっちだ。
あんた、コイツに見覚えがあるか?」
差し出された写真には、一人の好青年が写っている。
「誰ですか?」
「あんたが倒れた後に、ちょっとした事件が起きてな」
「はあ」
「この男……両親と揉めて、刺し殺しちまった。
その時に受けた傷で、コイツ自身も死んじまったんだが……どういう訳か、あんたに臓器を提供するよう言い残したらしい」
「なんだってそんなことを……」
「分からん。分からんからあんたに聞いてんだ」
困惑する二人のもとへ、若い刑事が近づき言伝をする。
「すまん、別件の電話だ。少し外すぞ」
「ええ……」
携帯を手に離れていく刑事を見て、男はふと自分の携帯を探した。
倒れた時に持っていたからか、そばの机に置いてあった。しっかりと充電までされている。
開いてみると、着信履歴には会社からの電話が数百件も溜まっていた。
しかし、ふと気づいた。
一件だけ留守番電話が残されている。
全く知らない番号だったが、耳に当てて内容を確認してみる。
『……おじさん。お久しぶりです。番号が変わって無いといいんですが。
俺が誰だか分かりますか?
こう言えばきっと分かりますよね。
用心棒です──』
男ははっとして、再生の音量を上げた。
『ずっと謝りたかった。
俺の両親は詐欺師でした。あの時……二人が貴方を騙した時、俺はまだ子供で、何も分かっていなかった。
言い訳がしたいんじゃありません。
ただ、ずっと貴方に会いたかった。僕にとって貴方は、親よりも親のような存在だったから……』
携帯を持つ手が震えた。
それでもしっかりと、一言たりとも聞き逃さないよう握りしめた。
『俺、これから両親に自首をするよう言いに行きます。
たぶん絶対に了承はしないでしょうね。クズですから。
そしたらきっと喧嘩になって……それで……俺の心臓は貴方のものです。貴方が5000万円で買ってくれたんですから、当然ですよね。
大金だって、今の俺なら分かりますよ。まったく、おじさんはとんだお馬鹿さんだなぁ……』
携帯のむこうで、青年が泣きじゃくる声がしばらく続いた。
『……生きてください。
それだけの対価を、貴方は払ってる。
ちなみに俺の生命保険を、貴方の名義にしてあります。
両親に騙された分に足りるか分かりませんが……足しにしてください』
「君は……何を言ってるんだ……」
『最後に、ひとつだけわがままを言わせて下さい。
貴方のことを……父さん、と呼んでもいいでしょうか?
いいですよね!
父さん、ありがとう。
そして……さようなら』
そこで留守番電話は終わりを迎えた。
タイミングをはかったかのように、刑事が部屋へ戻ってくる。
「すまんな、電話が長引いて。
詳しい話の続きは後日にしよう。ひとまず面識は無いってことでいいんだよな」
「…………です」
「ん? 何か言ったか?」
「私の……息子です」
男の言葉に刑事は首を傾げ、何かを喋っていた。
だが耳には入らない。
それよりも、男は止め処ない涙が溢れるのを抑えようと、ただただ必死になっていた。
流行りの詐欺にはご用心・完
流行りの詐欺にはご用心 雨宮羽音 @HaotoAmamiya
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