虚実混淆する、薬液や器具に溢れた妖しい世界……に満ちる不思議な医療愛

病室めいた場所で、「アンドロイド」と呼ばれながら少女が点滴を受けている――そんな場面から物語は始まります。
その後状況は二転三転し、世界の在り方もひっくり返り、虚実の境目がくるくる入れ替わりつつ進行しますが……個人的にこの作品の最大の見どころは、妖しい雰囲気に満ちた病院の空気感ではないかと思います。

点滴、殺風景な病室、ペストマスク。過去の遺物となった医術。
それらを信奉する人々や、その対立者の描かれ方に、奇怪さのみならず愛情を感じます。

古い医療も先端医療も大好き、と作者様にうかがいましたが、確かにそのとおりに、医療に対する愛が描写の端々からあふれていました。
病院・医療のイメージや情景がお好きな方に、とてもお勧めです。