私は才能があると仮定する。
このとき、私が送ったコンテストの結果は
1次選考落選 であった。
これは、私に才能があることと矛盾する。
よって、私は才能がなく、生きる意味がない。(証明終)
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この物語に登場する遥理央という人物は、自分の存在を証明するために「自分には才能がある」と仮定し、「生きる意味がある」という命題に向かって走り出していく。
彼女は、怖くないのだろうか?
冒頭の文章のように、自身を仮定するというのは時に残酷な結果を招くものである。
正直、私にはこんな仮定なんて出来っこない。
きっと彼女はそんなことも気にせず、前へ走り出していくのだろう。
そんな遥理央という人物の強い生き方を教えてくれる一作だった。
この物語をはじめて読んだとき胸に飛び込んできた衝撃を、何度読み返しても思い出します。
本気になることを恐れている心に、才能を仮定して自分の存在を示せ、とストレートな言葉が刺さって抜けませんでした。
現実をどこか静観しているようで、でも本当は自分も何者かになりたくて、才能なんてないけど特別を求めていて、だけど挫折の味は知りたくない、きっとみんなどこかでそう思っているのかもしれません。
だからこそこの真っ直ぐな物語は、誰かの心へと確かに届くのだと思います。どれだけ才能がないと言われても、貶されても、それでもその先へと進む私たちに。