都市伝説はこうして誕生した

主人公・美咲は、仕事をしながらWEBサイトに投稿する小説を執筆していた。
今回はコンテストに応募するために、新作を公開しようとしていた。
けれど、アイデアが全く浮かばず、執筆仲間が新作を発表する姿に焦りが募る。
それでも何かネタはないかとネットサーフィンしていたその時、ふと目に止まったのが男の子の人形だった。
それを購入し、直接手に取った時、アイデアが湧く。

「トイレの花子さんならぬ、公衆電話の太郎くんなんてどうかな」

こうして、WEB上に溢れる小説の中に、新たなホラー作品が生み落とされた。

WEBサイトで小説を公開。
それだけで、書き手の方は興味を持たれるのではないでしょうか?
しかもコンテスト。
まさに今、ですよね。
だからこその、苦悩やあるあると納得できるものが詰め込まれており、それだけでも楽しめます。

そして書き手の方はわかると思いますが、物語の中で違和感がないよう、描写について調べたり実行したりしませんか?
けれどこちらはホラー。
美咲さんは自分で決めた設定、『公衆電話の太郎くん』の呼び出し方を試してしまいます。
ここから、奇妙な事が起こり始めるのです。

美咲さんを中心に、WEBでも現実でも、太郎くんの存在がチラつきます。
そして、美咲さんの日常と美咲さんの物語が繋がり始め、恐怖が姿を現すのです。

物語を生み出しているのは、本当に作者なのか?
現実と創作の境界が曖昧になり、読んでいるこちらも迷いの世界に足を踏み入れた感覚を味わいます。
その中で揺らぐ事がない存在が、太郎くんです。
だからこそ、起こる全ての事が太郎くんの仕業ではないかと強く印象に残り、登場人物と共に恐怖に呑まれそうになります。

数々の犠牲を出すも、太郎くんを止めるべく動き出した人達が現れます。
しかし、この物語に本当の終わりはあるのでしょうか?

こちらの作品は最後に向かって走り出しました。
どんな結末が待ち受けているのか。
それを見るのが恐ろしい気持ちもありますが、読まずにはいられないのです。
きっと、プロローグを読んだ時から、物語に魅入られてしまったからでしょう。
これから読む方はどうぞ覚悟して下さい。
それぐらい、面白い作品です。

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