戦い続ける。そこにSAKEがある限り、SPIRITSが燃えている限り!

『我は汝のそばにいる。酒場という酒場を粉砕しろ!』

 かつて、アメリカの禁酒法時代直前、神から受けた啓示(ついでにアル中の夫への怒り)で、破壊活動のパイオニアとなった女性が存在しました。讃美歌を歌いながら、まさかりを手に街中の酒場を襲撃した彼女にくらべれば、さすがは我が日本国です。

 主人公の酒匂好男(さこうよしお)三十八歳は、完全に合法的な被選挙権を行使し、酒類の非合法化をマニフェストに掲げて、逆に破壊活動家にSATSUGAIされるという、実に穏便なエンディングを迎えます。

 そして皆さまお馴染み、神さまとの談合を経て、異世界に転生します。なんの因果か、転生した先は酒屋の少年ヨシー、チートスキルも元の地球世界から一般販売の酒類を召喚するというものでした。

 とは言え、チートスキルの恩恵で魔法効果が付与されるのか、はたまた異世界人は化学的成分組成が地球人に似て非なる名状し難い存在なのか、ヨシーと仲間たちは、続々と召喚される缶チューハイや缶ビールでパワーアップ、モンスター相手に無双します。召喚すればするほど、地球世界の酒類は、あるはずの在庫が消えるという一石二鳥の初志貫徹、困りものですね。

 これからの年末年始、クリスマスにシャレオツなブルゴーニュワインとか(ブルゴーニュを地図で指せません。多分フランス)、元旦におとその純米大吟醸とか、美味しいお酒に感謝しつつ、読まれてみてはいかがでしょう。

 もし、あったはずのお酒が見つからなかったら、それは彼の仕業かもしれません……。

その他のおすすめレビュー

司之々さんの他のおすすめレビュー591