酒を殺す!
K-enterprise
第1話 死因
『わたしは
「ひっこめ馬鹿野郎!」
「ひとの嗜好に口出しするんじゃねーよ!」
『いいですかみなさん! 仕事中でも運転中でも飲酒が認められてないのはなぜですか? なんで二十歳になるまで飲めないか考えたことありますか?』
「祝いの席や祭りじゃ必須なんじゃボケ!」
『酒には酔うって効果があります。それが気分を高揚させたり楽しくなったり嫌なことを棚上げするってのは分かります。でもね、飲酒運転の悲劇や、アル中による一家離散など、酒に人生を壊された人がどれだけいると思ってますか?』
「一部の不幸で印象操作すんな! だいたいこの世で酒に関わって生活してる人のことをどう考えてんだ。酒をなくすってことはそいつらの生活を奪って、人生を壊すってことなんだぞ?」
『タバコだってそうだったでしょ? 昔はみんな、どこでも吸っていました。それこそ、仕事中でも運転中でも新幹線でも飛行機でも、酒なんかよりよっぽど健全な嗜好品だったんじゃないですか? それが抑制されてタバコ産業が大打撃を食らって、そういう人たちの人生は壊れてないのですか?』
「た、タバコは健康にだな」
『酒は百薬の長なんて言葉は、酒好きの戯言ですよ。少量の飲酒は、循環器疾患への効能があるなんて話はありますけどね、たった20グラム程度ですよ? ビール一缶程度。そんな量で満足できる常習者がどれだけいるんです? そんなメリットはたくさんのデメリットを隠す言い訳にしかなりません! みなさん! 私がこの市議選に勝った暁には、まずはこの市から全ての飲酒文化を排斥しまーす! そしていつの日かこの世界中から全ての酒を駆逐しまーす!』
街頭演説でこんなやりとりをしていただけなのに、ある日俺は黒いハイ〇ースに引きずり込まれ、麻袋に入れられ、袋ごと叩かれ、刺激臭のする液体に沈められた。
「てめえの大嫌いな酒に溺れて死ね」
そんな下卑た男の声が、この世で聞いた最後の声だった。
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