第6話 考察

 まず前提として僕は転生者だ。

 地球での名前ははっきり覚えてないけど、酒を恨みながら死んだ記憶がある。

 この世から酒を殺す! 的な記憶がうっすらと残っているので、前世ではよっぽどのことがあったのだろう。


 でだ、神様にその因果にまつわる能力をもらったらしい。

 目を閉じて意識すると、頭の中に文字が浮かぶ。


『酒類召喚』(一日の召喚限界はレベルに準ずる)

〇レベル1:アルコール量100ml ただしアルコール度数5までの飲料に限る。


 詳細は無いけど、もう使ったからどんな能力かは分かってる。

 召喚できるものはアルコール飲料。

 一日に召喚できるアルコール量に制限がある。

 召喚できる飲料のアルコール度数にも制限がある。


 そして、召喚元は地球。どこから拉致パクってくるかは分からんが、誰かの所有物であることは間違いない。

 つまりこれは復讐なのだ。

 酒によって殺された僕が地球上から酒を一掃するために与えられた能力!


 ……いや、現状で一日に500mlの缶ビール4本だぜ? 地球全体の酒類生産能力を上回ってもいないのに、これじゃただの嫌がらせじゃないか。


 いや、待て待て。レベル1という以上、きっとこの能力を使えば使うだけ召喚能力も上がるに違いない。

 これに関しては今しばらく様子を見ていこう。


 で、だ。

 彼の地ではただのアルコール飲料だったものが、おそらくこの地では別の効果を持っている。

 実際に飲んでみた体感として、筋力、耐久力、反応速度など身体能力が数倍は上がってた。

 俗に言うバフってやつだな。

 ただ、その効果は長くは続かない。

 僕で言えば五分程度が限界だろう。


 ただのビールで、なんでこんな効果が起こるのかは、きっと肉体の構成要素がいろいろと違うからだろう。

 もし前世の体で転移していたら、僕はただ気持ちよく酔いながらウルフに殺されていたんだろうな。


 さて、メレレニアと、クルスアロブにはどんな効果があったのか聞いておかなくちゃな。その上で、この能力をどうするか考えよう。



「というわけであれはウチの新製品なんだ」

「……何が、という訳なのか分からないのだが」


 ひと眠りし、居間に待機していた二人を呼んで、第一声から省略したらクルスに疑いの目で見られた。


「だから新製品の酒なんだってば!」

「え? お酒? 回復薬じゃないの?」メレレニアが驚く。

「酒は百薬の長って言って同じモノなんです! そんなことより、ね、どうだった? ウチの新製品」

「……そのことなんだが、あれはなんなのだ?」


 クルスは真面目な顔でベッドの上の僕を覗き込む。


「あー、うん。ナニと言われるとアレなのですがなにか?」

「あの、ね? ヨシー君、あの回復薬ってもう無いのかな?」


 しどろもどろになる僕に、メレレニアが聖職者にあるまじき紅潮したモジモジ顔を僕に向ける。

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