第5話 起床
「知ってる天井だ」
目が覚めて飛び込んだ映像は見慣れた天井だ。
酒屋兼自宅の、僕の部屋。
そして主張する激痛。
「おうふ、これはまた懐かしい痛み……」
間違いない、二日酔いってやつだ。
粗末なベッドの上でもんどりうっているとバンとドアが開き、誰かが部屋に入ってくる。
「ヨシー君! 良かった、目が覚めて!」
聖女メレレニアさんが僕に覆いかぶさって涙を流す。
「良かった。メレレニアさんが無事で」
「……ヨシー君、やっぱり頭を打って……」
蒼白な顔で僕を見つめる聖女様。
いや、確かに覚醒前はただの十歳児だからさ、そりゃ聖女様のことは、そのなんだ、色々と悪ガキっぽい好色な目で見ていた記憶もちゃんと残ってるけどさ、さすがに前世の記憶が蘇った以上、馬鹿ガキのままじゃ無理ですってば。
「ああ、大丈夫。いえ、僕も今回の出来事で大人になったという訳です……っつ、頭があぁぁ」
話の途中で頭痛が襲ってくる。
「大丈夫じゃないじゃない!」メレレニアさんは僕を抱き起してくれる。めっちゃい匂いがして柔らけぇな。くそ、元は38歳だぞ、インプット情報に対する劣情変換は経験に左右されるんだから離れろ! いややっぱり離れるな!
「み、水をください」
「はい、どうぞ」と、枕元に用意してあった水差しから陶器のコップで水を飲ませてくれる聖女。
そのまま温もりに抱かれ、体は落ち着かないが心は落ち着いた。
「ヨシー! 起きたか!」
バーンと扉を開け、聖堂騎士クルスアロブが騎士服で現れる。
「ああ、クルスさん、ご無事でしたか」
「……おまえなんだその妙な言葉遣いは? そんなことより話を聞かせてくれ」
クルスにいちゃんかっけーな! オレにも剣を触らしてくれよ! なんて鼻を垂らしていた
「クルスアロブさん、お静かに! ヨシー君はまだ怪我人なんですから!」
「ああ、すまん。だが、我々の立場としては、昨日の顛末をはっきりさせておかないと、上にも報告できなくてな……」
えっと、メレレニアさんが確か17歳くらいで、クルスアロブが23歳だっけな。クルスがメレレニアに惚れてるのをからかった記憶がある。でもメレレニアは職務に忠実で色恋には興味なし。
まあ、なんだ、がんばれ少年よ。
「あ、大丈夫ですよ。僕もあの後どうなったのかとか知りたいですし、でもごめんなさい、もう少しだけ寝て、それからでもいいですか?」
僕は弱々しく二人に微笑む。
この体の容姿が整っていることは生まれた時から知っている。
そうでなくても弱者保護に特化している立場の二人は、僕の申し出に頷き部屋を出て行った。
さてと、考察だ。
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