第3話 覚醒
『要求が通ると際限なくゲスになるタイプだね。まあいいでしょう、あなたの因果に沿った能力を与えましょう』
そんな捨て台詞のようなものを思い出したのは、僕にとってひたすらにヤバい状態でのこと。
つーか、転生してから思い出すまでに十年も経ってるんだが?
これ、命の危険がなけりゃ思い出さなかったんじゃ?
僕の目の前にはこの街の聖女メレレニアさんと聖堂騎士クルスアロブさんが血まみれで立っている。
別に僕を殺そうとしている訳じゃなく、僕はむしろ守られてる。
背を向けてる二人が対峙してるのはワイルドウルフ。
こいつは食の為というより、狩猟を楽しむ習性を持つケモノだ。
そいつが、街の中で配達中の僕を襲ったんだ。
初撃は持っていた酒樽で防いだけど、衝撃で吹き飛ばされ頭を強打しつつ樽の安酒を浴びてしまった。
自分では絶対に飲まないクソ不味い酒。
そんなものをたっぷりと口にしたからか、頭を打ったからか、まあいろいろと思い出したんだが、混乱する僕にウルフが迫る。
「ヨシー!」
「ヨシー君!」
襲われたのが聖堂教会の側だったから、顔見知りの二人が僕を助けに来てくれて、剣や魔法でウルフと戦ってくれた。
だが、このウルフは森の主クラスの強者で、街で最強を自負する聖職者二人がかりでも押されている。てか、二人ともメッチャやられてるんだが!
「ヨシーは今のうちに逃げろ!」
銀色の金属甲冑に身を包んだイケメン聖堂騎士が、ウルフの爪と剣で切り結びながら叫ぶ。ちなみに動くたびに甲冑の隙間に負った傷から血を振りまいている。
「ヨシー君、ここは私たちに任せて、早く!」
甲冑以上の防御力を誇る白い聖衣は無残にも破れ、年若い聖女様の綺麗な柔肌に傷があぁぁっ!
つーかこのまま二人ともやられるってことは、この街で一番の実力者である存在が失われるってことで、そうなりゃ人口千人程度の、この小さな街は全滅するだろうな。と理解する。
転生したこの世界で、僕はごく普通の一般人だった。
剣や弓の素養もなければ魔法適性もない。
ただの酒屋のせがれとして生を受けた。
二年前に両親が死んで親父の残した設備を使って醸造酒を作って売って生きている。
それがヨシー、僕の人生だったが、今度の人生は短かったなぁ……。
『あなたの因果に沿った能力を与えましょう』
いろいろと諦めかけた僕は、神様の声を思い出す。
能力?
頭の中に言葉が浮かんでいた。
『酒類召喚』(一日の召喚限界はレベルに準ずる)
〇レベル1:アルコール量100ml ただしアルコール度数5までの飲料に限る。
なんだこりゃ?
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