君に、出逢えて良かった。

冒頭を読めば、これから語られる物語が切ないものであることを想像できるでしょう。これは、くらげになりたいと願う少女と、彼女と友達になった少年少女たちの、切なくも瑞々しさが感じられる物語です。

情景描写が丁寧で、自身がその場で彼らと共にいるような感覚を味わえました。自然と光景が目に浮かぶのです。その世界が立てた音ひとつで、自分の中にある懐かしい頃に引き戻される感覚は、とても面白いものでした。

響が駅のホームで出逢う少女、海月。そんな彼女と友情を育んでいく響たち。
四人組の彼らが体験したかけがえのない時間を共有できたことは、とても感慨深いものでした。

彼らは純粋で、柔軟性があって、透明なキラキラしたものを持っている気がして、眩しい。特に恋をしている子って、切なくて可愛くて堪りませんね。

少女が選んだ選択、彼女を思う少年たちが抱く想い。
ひと夏の中で最大限に輝いた彼らの軌跡は、きっと私たちが前を向く道標の一つとなるでしょう。

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