仲野家の秘密

打ち明け

時間と季節のせいもあって異常に暗く不気味な路地の中を進み、3年前に見て以来の光景に突き当たった。


「ここだな」


当時と比べたらかなり古びた様に見える。


三年前と同じように、特に何の異常もなく2人とも塀を乗り越えることができた。2人を見つけるため、薄暗い路地を先に進もうとしたその時、後ろで大きな物音がした。


「何?!」


驚いて叫びながら遥香が後ろを振り返り、続いて俺も後ろに視線を向けた。

すると、つい数秒前に越えた塀が消えていて、その場所にはコンクリートの瓦礫だけが山となって散らばっていた。


「もう少し遅かったら巻き込まれてたかもな、」


ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー

- 三時間前 -


一晩を明かし、ネカフェを出たあと、私たちは街を歩き回った。

言葉を交わさないまま数十分歩き、公園に差し掛かったところで美咲が口を開いた。


「…少し休む?」


「…うん」


何故だか少し重い雰囲気を美咲の言葉に感じた。

まあそれもそのはずだ、異次元ともいえよう場所からなぜか帰れなくなってしまったのだから。


2人でベンチに腰を掛け、少しの無音の時間わ挟んだ後、私は口を開いた。


「…ねえ」


「ん?」


「少し気になってたんだけどさ…」


「うん」


「いや、やっぱりなんでも」


「そう?ならいいけど」


ずっと何かが引っかかっていた。それを聞くためにずっとタイミングを探って、やっと今聞こうと思った。

けれど、私の中の何かが、「聞いてはいけない」と言っているように感じて、とっさに引っ込んでしまった。


そんなことを思っていると、今度は美咲が先に口を開いた。


「…葵が何を言いたいのかはわかるよ」


「え?」


私が肝を抜かした様子でいると、少し息をついて再び口を開いた。


「もしかしたら違うかもしれないけど、『なんで今になってここに呼んだのか?』って聞きたいんでしょ?」


「うん、まあ」


それだけではないものの、本当に思っていることの一部をそのまま読み取られている様で、若干気味の悪さを覚えた。


「そりゃあ聞きたくなっちゃうよね、現にこんな状況になっちゃってるわけだし。いいよ、全部話す」


そう言った後、一息置いてこう呟いた。


「これ以上後悔はしたくないしね…」


ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー


私の家、仲野家は神社の家系だった。


ずっと昔から天燕の街に陣取っていた家系だけど、そこまで大きい神社でも無いし、同じ市内の人でも知ってる人自体多くはなかったかもしれない。


しかも、ずっと昔にあったらしい相続争いのせいもあって、雨燕神社を保有している家系なのにも関わらず、苗字が仲野になり、雨燕家が消滅したことで更に知名度が無くなったの。


まあそれは置いといて、私は神社の子供としてずっと育ってきた。


礼儀作法を学んだり、色んなしきたりに縛られた生活をしているうちに、幼かった私が周りと関わる機会は徐々に減っていって、ほとんどひとりぼっちの状態が続いてしまった。


そんな私の小さかった頃の唯一の楽しみは本を読むことだった。

図書館などで借りる本も良かったけれど何より、家にしかない、昔の伝説とかそういったことについて書かれた本は一段と面白かった。


いつも通り神社の書物を家探ししている時、私はと出会った。

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空に陽が差すその日まで Pナッツ @Peanut_K20

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