向こうへ

ー3年前ー


「ちょっと遊んで来るね〜」


「どこに行くの?」


「ん〜?ちょっと友達と遊びに行くだけだよ」


「遅くまで遊んでたらダメだからね、早めに帰ってきなさいよ」


「わかってる〜」


私は母の掛け声を適当に流して家を出た。


この街には駅がなく、街の外につながるバスもなければ、街の外に出たことのある人もいないという。


コンビニ、スーパー、カラオケ、ゲーセン、ガソスタなどほとんどが街に揃っており、南部のビル群には多くの企業が足を置いていることから勤め先にも困らないので、ここを出る理由がないのだという。


もちろん、外から街に入ってくる人もいないため、街の外の様子を知る人は誰1人としていない。


好奇心が高かった当時の私は、最も信頼できた友達2人を誘い、街から出てみることにしたのだ。


少し寝坊し準備に時間がかかったので集合に遅れそうだった。


集合場所の公園に着いた頃にはもう2人とも既に集まっていた。


「はぁ、はぁ…遅れてごめん…」


「葵また寝坊したの?w」


「あはは…」


「いつも通りで何よりだな」


今日誘った幼馴染で私の数少ない友達の遥香と祐樹に笑われながら、もう1人知らない子が遥香の後ろにいることに気づいた。


「あれ、その子誰?」


「あれ、葵知らないんだ。隣のクラスの仲野さんだよ。私達が話してるの聞いてたみたいで、気になるから着いていきたいって言われたか連れて来ちゃった」


「は、初めまして。仲野美咲です。急に中に入っちゃってすみません気になってしまって…」


「全然いいよ、よろしくね」


そう言うと、小さく頷いてくれた。


どうやら私よりも人と話すのが苦手らしい。


「さあ、行こっか」


「待って、なんか計画はあるのか?」


「いや…全く…」


「本当に計画性のカケラもない奴だな」


「う、うるさい!」


「まあまあ2人とも落ち着きなって、葵が何も考えてないのはいつものことじゃんw」


そんな言い方しなくても…


「まあ確かにな」


結局、街の端に沿って歩き、出られる場所を探すことにした。


この街の周りには、北には少し険しい山、南には隙間なくビル群が並んでいて、その他の場所も高い塀で塞がれていて出られなくなっていた。


「あ、あそこなら越えれそうじゃない?」


「本当だ、あそこはちょっと低い」


街の西側の路地の中を遮るように並ぶ塀の中から、一箇所だけ低くなっている場所を遥香が見つけた。


身長が一番高い祐樹は余裕で乗り越え、残った私達3人も何とか塀を越えることができた。


「思ったよりあっさり越えれちゃったねw」


「そうだな」


「路地にいてもよくわかんないし、とりあえず広いとこに出てみよう」


薄汚れて暗い路地を5分ほど歩くと、広い道に出た。


「うわっ眩しい」


くらい路地を出て突然目をさした光に、皆んなが目を腕で覆った。


ゆっくり目を開き、腕を退けると、そこには青く大きい空が広がっていた。

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