外側
あの日、私は、私たちは初めて街の外側の世界を知った。
そして、それが本来の普通であって、私たちの住む街が異常であるということも身をもって知った。
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「うわあ…すごい…明るい…」
先程までほとんど口を開かなかった仲野さんでさえ圧巻されているようだった。
「とりあえずちょっと歩いてみようぜ」
普段は落ち着いた性格の祐樹でさえも興奮を隠せない様子でいる。
少し歩いて回ったものの、いたって変わったところはなく、車が走り、人が歩き、建物が並ぶ。街並みはもちろん違うが、空の様子以外は自分達の街と何一つ変わらなかった。
強いて言うなら人が多いくらいだ。
その後、この街が私たちの街と違う空をもつ理由が気になった私たちは、道ゆく人に声をかけて話を聞いてみたりした。が、声をかけた内の大半が無視か、軽くバカにしたような言葉を放ったりした。
「そんな子供騙しのような戯言に付き合ってられるか」と軽蔑されたり、「晴れたり曇ったりするのが普通だから、何か見間違いじゃないの?」と言われたり、ただただ笑われるだけだったりと、頼りになりそうな答えは全く帰ってこなかった。
誰1人として「常に曇っている天燕」を知らなかった。
「何で誰も俺たちのいう事に耳を傾けてくれないんだ」
「でも…天燕市の名前は知ってるって…」
「でもここと同じように晴れてるのが普通だって、私たちの知ってる天燕市とは違うように思うけど」
「確かに」
そうして話してる時、ふと思い立って私は自分たちが来た方を振り返った。
遠くには天燕市の南側のビル群が見える。
「ねえ、あっち見て」
私はゆっくりと天燕市の空の方を指差した。
そして、私の指が差したその先は、決して曇ってなどいなく、ここと同じように空が晴れていたのだ。
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