再来
境界
その日はもう時間が遅く、日が傾きはじめていたため帰ることにした。
来た時と同じ路地を通り、来た時と同じ、少し低くなっている塀にたどり着いた。
数時間前と同じように塀を越えた時
「っ…!」
私は急にひどい頭痛に襲われた。
「おい大丈夫か?」
「う、うん。大丈夫」
一瞬意識が遠のくような感覚がしたが、痛みはすぐ引き、祐樹に声をかけられた時にはもう何ともなかった。
その時ふと空を見上げると、既に空は雲に包まれていて、傾き始めていた日はもうどこにも見えなくなっていた。
ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー
あれから3年、結局あの日はそのまま解散し、それ以降忘れたかのように街の外のことに触れることなく過ごしていた。
それは私だけでなく他3人も同じだ。
今、私と遥香と祐樹、そして美咲(仲野さん)は市内唯一の高校に入学し、クラスは別れたりしたものの、前と変わらず友達でいた。
そして今日、唯一同じクラスになった美咲が昼休みに話しかけてきた。
「ねえ、3年前のあの日のこと…覚えてる…?」
「え?」
唐突すぎる話題提示に少し頭が追いつかない。
「ほら、街を出た日があったじゃん」
「あ〜懐かしいね」
「あのさ、3年ぶりに行ってみない?今度は2人で」
美咲は三年前と比べて、多少人見知りはあるものの私たちには心置きなく話してくれるようになった。
しかし、私自身も今まで半分くらい忘れていたようなことを、しかも外に出ようって…
「いいけど、でも何で急に?」
「え?まあなんとなくかな」
少し返事にぎこちなさを感じたが、あまり気にならなかった。
何より、また向こうに行ってみようと言うのだ。
思い出すとまた興味が湧いてきた私は、断るはずもなくそのまま日程を決めた。
ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー
次の日曜、私たちは3年前と同じ場所に集合した。
「あ、やっほ〜」
「やっときた〜。もう10分も過ぎてるよ」
「ごめんまた寝坊」
「にしても寒いね〜」
「ほんと昨日まではあったかかったのに、マフラー巻いてくればよかった」
「取りに戻る?」
「いや、流石にこれ以上遅らせるのは申し訳ない」
「そんな気にしなくていいのに〜」
面子は減ったが、3年前と変わらないように会話をしながら例の路地に向かった。
少し前まで忘れていたのに、路地までの道はなぜか鮮明に覚えていて、ほとんど迷うことなく塀までたどり着くことができた。
前よりも体が大きくなったからか、思ったよりも楽々乗り越えることができ、塀の向こうには相変わらず不気味な路地が伸びている。
そして塀をこえたと同時に、3年前には感じた覚えのないような違和感を背中に感じた。
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