崩れた塀
言葉を交わさぬまま歩き続け、路地を抜けた。
だがその時、私と美咲は同時に異変に気がついた。
「え…?」
そこからの風景はいつもと何も変わらないように見えたが…
「晴れ…てる…」
そこには空が青い、私たちの知らない方の天燕の街が広がっていた。
「え待ってどういうこと?」
「私たち普通に戻ってきたよね?」
「うん」
「でも…塀が壊れてたからとか…?」
「かもしれないけどわかんn…」
言いかけたところで聞き覚えのある声が飛んできた。
「葵今日は珍しく来るの早いね〜」
遥香の声だ。
声の方を向くと遥の姿があり、横には祐樹がいた。
「え、いや、何のこt…」
と答えを返そうとすると、美咲が私の口を塞ぎ、話すのをやめさせた。
「???」
「ちょっと静かにしてて」
美咲が何を考えてるのか全くわからなかった。
「葵〜?てかその子誰〜?」
「どうしたんだあいつ、どこかおかしくでもなったか」
私から20mくらい離れたところで私に近づきながら会話をする2人の奥から、さらに別の人影が近づいてきた。
「ごめん遅くなった〜!」
それは私だった。
遥香と祐樹が振り返った瞬間に、美咲は私の体を引っ張って路地の中に戻り、物陰に隠れた。
「えっ?」
「お前なんで後ろから?」
「え、何?なんかあった?」
「いやだって今までここに…あれ?」
「何言ってるの?私ならさっき起きて今来たところだけど」
「嘘だろ、じゃあさっきのは…てかなんでお前は昼過ぎまで寝てんだ」
「あはは〜…」
「まあいいや、見間違いでしょ」
「そうだな」
そう言ってもう1人の私たちがここを去るまで、息を潜めて待った。
「…行ったね」
「あ、ありがとう」
「何が?」
「あの時返事しちゃってたら見間違いだって思われなかったかもしれないし」
「いいよそれくらい」
「でもよく気づいたね、あんなに遠くから来てたのに」
「私目だけはいいから」
美咲はそう言って笑って見せたあと、すぐ真剣な表情に戻った。
「で…これって私たち元の街に帰れてないってことだよね…」
「うん…」
「やっぱあの塀が崩れてたのが原因かな…」
言われてみれば、三年前、塀を越えて帰った時の頭痛はなかった。
もしかすると、今日来る時に感じた違和感はこれを暗示していたのかもしれない。
「…どうしよう」
「とりあえず今日はもう休めるところを探そう」
「お金どれくらいある?」
「まだ結構余裕あるよ」
「私もまだあるからとりあえず今日は大丈夫そうだね」
この後私たちは路地を戻り、反対側に出てからネカフェで一晩を明かすことにした。
「あ、明日月曜日だ」
「学校行けないし、しかも親にも心配かけちゃうな」
「ほんとだ、どうしようね」
「まあ今考えても仕方ないしいいでしょ」
「そうだね、私どうせ課題やってないしw」
「それはやりなよ、」
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