失踪
朝礼が終わるチャイムが鳴り、一限目までのわずかな時間にすべての教室から大量の生徒が溢れ出てきた。
その人混みの中、言葉を交わす2人の姿があった。
「あれ、葵と美咲来てないんだ」
「さっきあいつらのクラス覗いてきたけど見当たらなかったぞ」
「2人仲良く遅刻かな〜、もしかしたら葵はまだ寝てるかもねw」
「電話して起こしてやるか」
「裕樹が親切なの珍し」
「うるせえ、お前も仲野さんに連絡してみろ」
「はいはい」
『Prrrr Prrrr…おかけになった電話番号は、現在電波の届かない所にあるか、電源が切れている為、かかりません。ツー、ツー…』
「おい葵のやつ電話繋がらねえぞ」
「美咲にも繋がらない」
結局、2人のどちらにも連絡がつくことのないまま、一限目が始まるチャイムが鳴り響いた
ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー
-放課後-
「結局2人とも今日はいなかったね」
「まだ連絡つかないのか?」
「うん」
「家行ってみるか、まだ寝てるかもしれねえし」
「確かに葵ならワンチャンwじゃあまずは葵ん家行こう」
その後、30分かけて葵と美咲の家を回ったが、結局2人ともそれぞれの家におらず、葵の親によると昨日から帰っていないらしい。
美咲は一人暮らしでアパートに住んでるため、最後にいつ家にいたかもわからない。
多分葵と一緒だと思うが。
「どこ行ったんだろうね」
「知るかよ、普段からなんも考えてないやつの考えてることがわかるはずないだろ」
「がち悪口じゃん」
そう話しながら夕暮れの中を歩いてる時、左手にある路地を見てふと思いがかる節があった
「なあ」
「ん?2人の場所でもわかった?」
「あれ見ろ」
そう言って遥香の視線を手元のスマホから左の路地の奥に移す。
「向こうに行った説ないか?」
「え?いやまさかwだって前に行ったのは最初で最後で3年前だよ?私だって今のいままで忘れてたのに今更そんなこと…」
「でも2人とも連絡つかないなんておかしくないか?」
「それはそうだけど…」
「行ってみる価値はあるだろ?」
「まあ、ね…でも今日はもう遅くない?」
遥香の言う通りだった。スマホの時計を見るとまだ4時だが、もう11月なのもあって空気は寒く、街灯には既に灯りが灯っている。
「遅いのは確かにそうだけど、放っておくわけにもいかないだろ」
「…わかった。お母さんには美咲の家に泊まるってことにして伝えとく。祐樹はどうするの?」
「俺一人暮らしだから問題なし」
俺はそう言って親指を立てて見せた。
「じゃあ行くか」
「うん…」
正直なことを言うと少し、いやかなり不安がある。いくら計画性のない葵とはいえ、真面目な美咲を連れているのにも関わらず二日間姿を消して、戻っていないわけだ。
きっと何か、俺には予想のつかないような異常なことが起きているのだろう。
そんな不安を頭の中に過らせながらも、2人は路地の奥へと足を踏み進めた。
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