からくれなゐの恋模様

 途中で評価は既に入れていたが、読了させてもらったのでレビュー。

 ジャンルで言えば和風宮廷ファンタジーライトノベルとなるか。
 広く読書の知識がある方であれば、容易に表紙イラストが思い描けるような、そんな手堅い世界。
 また日本史に触れていれば、頭の中で実像を結べるような魅力溢れるキャラクターたち。
 この物語は煌びやかに彩られている。

 勿論、表紙絵は寧々と万丸だ。
 望むと望まぬとに関わらず、栄華に輝く貴族社会と裏腹に蠢く怪異の闇夜に直面し翻弄されながら、2人の間に咲く花を愛でるのが本筋と言えよう。

 特筆すべきは、11話と最終話となる23話を挙げるべきで。

 11話の描写などは、触れなば落ちんとする花弁のような繊細さと、熟した果実に食い込む指先のぬめりのような微かなエロスを醸し、その風情によって読者を楽しませてくれる。

 23話に至っては、紅葉のように赤面し、竜田と称された寧々の愛くるしさ。物語で言うなら関白の慧眼と、歴史で述べるなら在原業平の和歌にも、我が意を得たりと膝を打つほかあるまい。

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