零章 黒川邸(後編)
「どうして嘘をついたんですか?あなたは海藤ではないでしょう?狂見君」
シルバーは言いながら狂見の学生所を見せた。その不気味な笑みが忘れられず狂見は目の前が真っ黒になった。呼吸が浅くなり冷汗が止まらず上手いいい訳が見つからない。
(やばい、やばい...早く言い訳しないと...怪しまれる。最悪...殺される何かいい案は...)
狂見は焦りシルバーに言おうとしたがシルバーはため息をついた。狂見は驚いて肩がビクつく。シルバーは片手を頬に付けじーと狂見を見た。狂見もシルバーを見ると目が合い思わず反らしてしまう。狂見はシルバーの視線だけでなくこの大広間の漂う空気感に嫌悪した。シルバーの一言から住人たちの視線は狂見の一点に絞られた。今まで狂見に興味がなかった住人も興味本位で狂見を見つめた。狂見の近くに座る五人は狂見を捕食したそうな目で狂見を見ていた。
(どうしたらいいんだ。やっぱり正直に言うか?でも...人形の彼女の言葉が頭に過る。どうしよう...初対面の人に名乗るのが怖かったと言えばいいのか?)
と狂見は考えて理由を答えようとしたが”答えてはいけない”ような気がしてならなかった。狂見は...
(理由を話す?話さない?俺は...)
狂見は沈黙を貫いた。ここで理由を言ってもいい訳にしかならず逆効果のような気がした。狂見はシルバーを見るとシルバーは両手を上げて言う。
「降参です。そんなに真剣な視線を送られたら照れてしまいますよ。まあ、私たちは初対面なわけですし警戒するのも無理はないです。ただあなたが嘘をついていたので少々揶揄っただけです。これをお返しします」
と言うとSebastainに渡し狂見の元に学生証が戻ってきた。狂見が受け取ると住人たちも興味が無くなったのか狂見に見向きもしない。狂見はその変わりように驚いた。
(あの時と違い今度は見向きもしない。なんなんだこの住人たちは...話の通りだ。不気味でどこか怪しい)
先程感じた異様な視線に狂見は緊張感が襲い警戒しながらシルバーを見た。シルバーも住人同様に興味を無くしたようで狂見のことは触れることは無く話題を変えた。シルバーの話しを聞く者、各自話し出す者、沈黙し動かない者、料理に手を付けず遊ぶ者と自由である。狂見は冷汗をかきながら見ていた。
(各各が自由すぎる。これからどうすればいいんだ。住人たちはSebastainの作った料理を食べ終える頃か?)
住人たちを見回すと住人たちは料理を食べ終えていた。SebastaiとSyunthuaは順番に片付け始める。片付け終えた二人は近くの椅子を引き二人が座るとシルバーに相槌を打つ。シルバーは頷くと目を閉じ一息ついて住人と狂見を見回した。
「さて...そろそろ本題に入ろうかな」
「「「「「「「「「「「「...」」」」」」」」」」」」」」
シルバーがそう言うと両手を組んだ。すると空気が変わり先ほど感じた不気味な空気になる。住人たちはシルバー同様顔色を変え態度も変わっており狂見は内心困惑していた。
(なんだ?この空気...あの時と同じ嫌な空気だ。シルバーの一言で住人たちの態度が変わった。これから一体何が始まるっていうんだ...)
狂見は身構え嫌な汗が頬を伝う。沈黙する住人たちとシルバーを見てその場から逃げ出したい衝動に駆られる狂見にシルバーは声を掛ける。話しかけられると思っていなかった狂見は情けない声を出した。
「ふぇ?俺...ですか?」
「はい、貴方ですよ。狂見奏君」
「いや..その...話しかけられると思っていなかったので」
「正直者でよろしいです」
と言うシルバーは蔓延の笑みを浮かべていた。狂見に正直者と言うシルバーは皮肉しか感じられない。嫌味なシルバーに狂見は苦笑いをする。対するシルバーは相変わらず胡散臭そうな笑みを浮かべている。
(シルバー...どこかいけ好かない不思議な男。この黒川邸の主人であることは風格と様子から見ても分かるけど..どこか怪しい。何かを隠していることは間違いない。シルバー...信用できないな...)
様子を伺うように話しかけてきたシルバーを見る。シルバーはSyunthuaを呼ぶと狂見の傍へ立った。
「え?Syunthua?」
「すまないね狂見君。これから大事な話しがあるんだ。お客人に聞かせる話しではない、身内の話しなんだ。長話しにもなるため退屈になる。お部屋に案内しましょう。Syunthua...よろしく頼むよ」
「かしこまりました。狂見様、お部屋にご案内いたします」
「え...あ..はい」
狂見はSyunthuaに言われ立ち上がりSyunthuaに続いて大広間から出ようとした時シルバーに話しかけられた。
「狂見君」
「え?」
「申し訳ありません。一つ言い忘れていました。今夜は月が登ります」
「月?」
「はい。それはそれは綺麗な月です。綺麗な月が登ります。その月は人を魅了し時には狂わせる”赤い月”になります。ですのでご注意ください」
「赤い月...」
(急に何を言い出すんだ。月が綺麗?人を魅了して狂わせる赤い月って一体何のことを言ってるんだ?比喩か何かの例えなのか?)
狂見はシルバーの意味が分からず立ち尽くし、シルバーは続けて言った。
「今夜は赤い月が登ります。深夜の二時ごろにお部屋から出ないでください」
「出たらどうなるんだ?」
「そうですね...赤い月に魅了され狂わされます」
「......」
(赤い月に魅了されて狂わされる。こんな話し普段なら冗談だと思い信じない。海藤や川上に言われるなら笑い話しで済まされるが相手はシルバーだ。シルバーの話す赤い月が冗談には思えない。もし本当にそうならば深夜の二時に外に出ると赤い月魅了されて狂わされるのか)
(でも...あの人形だった少女は俺に住人達を信じるなと言われた。全てが嘘ではないにしろシルバーの話す赤い月はただならぬ予感がしてくる)
再び身構える狂見をあざ笑うように手を振った。
「冗談ですよ。ですが深夜二時ごろは遅く就寝時間も過ぎています。興味があっても子供みたいにいつもでも起きてはだめですよ。何せ...黒川邸には出ますからね」
「出るって...ゆ、幽霊が」
「いえ..巡回するSebastaiです。深夜にSebastaiとSyunthuaが一日交代制で巡回するんですよ。二人に迷惑が掛かってしまいますからね」
「そうなのか...分かった」
「では...ごゆっくりお寛ぎください」
Syunthuaは狂見に声を掛けると住人達に向ってお辞儀をして大広間から客室まで案内した。
「こちらでございます」
「ありがとうございます」
「いえ...これも仕事ですので...」
狂見はドアノブを掴み扉を開けようするとSyunthuaに呼び止められた。
「狂見様..よろしいでしょうか?」
「あ、はい」
「朝食はお部屋のベルでお知らせいたします。消灯時間は21時となっております。それ以降の時間帯で廊下や部屋の外の外出は控えていただきたいと思います。また深夜に二度の巡回があります故ご了承ください」
「分かりました。21時までには寝ます」
「後...一つだけ必ず守っていただきたい禁止事項がございます」
「禁止事項?」
「はい。今夜は深夜二時に赤い月が登ります。それ故深夜二次には決して部屋から廊下に出ぬようよろしくお願いいたします」
とSyunthuaは言いお辞儀をして大広間に戻っていった。狂見はシルバーとSyunthuaに言われた赤い月について疑問があるものの部屋に入り一休みすることにした。
部屋に戻った狂見は一呼吸すると部屋の明かりをつけようとスイッチを探したが見当たらず周囲を見回すと小さなランプとマッチを発見した。
「もしかして..電気じゃなくてこのマッチを使えってことか?」
狂見は試しにマッチとランプを手に持つと一本を残しほとんど湿っていた。
「使えそうなマッチは一本だけ...それにこのランプも埃っぽいし使えるのか?」
不審に思いながらマッチに火をつけると薄暗くだがランプに明かりが灯る。先ほどと違い部屋は暗いが変わったことは特にないだろう。狂見は気にせずベットに横になった。ランプの明かりは消えることなく灯しておりそのわずかな光を見つめていた狂見はいつの間にか眠りについた。
ゴーン、ゴーンと部屋に掛けられてる古時計が鳴り響き狂見は目を覚ました。
「あれ?俺..寝ちゃったのか?ランプはまだ付いてるな。今は...」
ランプの明かりで時間を確認すると深夜二時になっていた。
「深刻二時か...そう言えばCynthiaがこの時間は禁止事項だから絶対に部屋から出るなって言ってたな。この屋敷は不気味だし、部屋から出ないでこのまま眠った方が...」
と狂見が言ったその時だった。廊下からガラスのような何かが割れるような激しく何かがぶつかり走り去るような音が聞こえた。
「な、何だ!ガラスの音?それに廊下から聞こえた...どうしよう」
Cynthiaには禁止事項のため深夜二時には部屋から出ないことを付けられていたが狂見は好奇心が勝った。
『禁止事項を破って廊下に出ますか』
はい・いいえ
→はい
狂見は念のためにお守りを手に持ち廊下へ出た。すると誰かが狂見の後を追いかけた。その人物が狂見の部屋を過ぎると狂見の部屋のランプの明かりが消えた。
廊下は明かりが一切なく静寂なため狂見は不気味さを感じながら音の下方へ向かった。
「確か...この辺だったはず。ガラスが割れて大きな音がして...なんだこれ?」
音の下場所についた狂見は周囲を見るがやはり暗く何も見ることが出来ず明かりを探そうとした時にべちゃっと鈍い音がした。何かの液体を踏んだようだった。しかし、その音を聞いた瞬間狂見は冷汗が流れた。この液体は異質な匂いがした。狂見はこの異質な匂いを嗅いだことがあるからだ。この匂いは怪我をした時に起きる。自身が怪我をした時や最近だと後輩の浅墓の足が怪我をした時に流れた独特な匂い。
「この匂いの正体は..まさか!」
狂見の嫌な予感が当たったように月が登り廊下を照らし、その匂いの正体が明らかになった。その正体を見た狂見は戦慄し腰が抜けた。
「人が..し、死んでる!」
「な、なんで!どうして!」
「お、おい!しっかりしろ!」
狂見は転びそうになりながら駆け寄った。廊下には誰かに刺されたらしき少年が倒れていた。首を斬り付けられ出血が止まらない。狂見はしたいかと思ったが微かに息が合った。
「おい、しっかりしろ!何が合ったんだ!」
「...か..す...あ..」
「血が!待ってろ何とかする!」
「に..ろ..は...」
少年は何かを狂見に伝えようとしたが出血のせいで伝わらない。少年の出血を止めようとする狂見の手を掴む。
「に...げ...ろ...」
「え?」
「う...し......ろ」
「後?...え」
狂見が振り向いた時目の前が赤く染まった。ゴボゴボと鈍い声と音が廊下に響き景色が変化した。横たわり赤い液体と共に体の焼けるような痛みが全身に走った。誰かの醜い叫び声が聞こえる。喉が焼ける痛み月の明かりで反射した廊下の景色を見て狂見は理解した。誰かに襲われ、この血と叫ぶ正体は狂見自身だということに。痛みと共に体の感覚が無くなっていくのが分かる。目の前が暗くなり自分を襲った人物を見るがぼやがかかり分からない。狂見を襲った人物は笑うと鈍器を振り上げた。
『だから言ったのに...禁止事項だから外に出るなって...』
その言葉を最後に狂見は額に激しい痛みを感じた。廊下には鈍い音がこだまし月が雲に隠れた。殺人を隠すように廊下は再び暗くなった。
ゴーン、ゴーンと部屋に掛けられてる古時計が鳴り響き狂見は目を覚ました。
「うわあああああああああああああああ!」
「はあはあ...はあはあ...」
狂見は叫び声と共に目が覚めた。冷汗と震えが止まらず斬られた首と額を確認した。
「あれ?俺...死んだはずじゃ...あれ?夢?今...何時だ」
「嘘...深夜二時...」
古時計は確かに深夜二時を指していた。狂見は訳が分からず布団に腰かける。
「おかしい。深夜二時なんて...だってさっきも...俺...夢を見てたのか?でも...あれは...夢なんかじゃないけど...でも死んだなら何で生きてるんだ?きっと夢だ夢だ。だって...死ぬはずないし...疲れてるだけできっと大丈夫だ。この後ガラスが割れる音なんてしないはず...」
狂見がそう言いかけた時に廊下からガラスが割れる音と何かがぶつかる激しい音が響き渡る。狂見は驚愕し息がしずらくなる。過呼吸になりかけながら呼吸を落ち着かせる。呼吸が安定した狂見は落ち着きを取り戻した。
「深刻二時に目が覚めて...ガラスが割れる音がした。もしも夢じゃなくてこれが本当なら正夢になる。そうなったら俺はまた...殺される...」
「死にたくない...怖い...けど...俺が行かなかったらあの殺された男の子はどうなる?そもそもあの子は誰なんだ?屋敷で広間に居た住人の中には居なかった。あの子は一体...」
恐怖と好奇心が勝った狂見は廊下に様子を見に行くことにしたが今行けば自身が殺される時間でありもう少し遅れて部屋を出ることに決めた。三十分が経過し狂見は廊下を出たが直ぐに足跡が聞こえ吹き返す。ドアの隙間から覗くと例の人形と言われた少女が車椅子で廊下を移動していた。
「あの子は人形じゃ...いやなら何で動けて...あの方向は廊下の...まさかあの子が!追いかけよう」
狂見は少女を追いかけるが見失ってしまった。周囲を見回すが少女の姿はない。
「可笑しい...この廊下は一方通行で隠れる場所なんてどこにもないのに...あ?月が!」
「え?何で...死体が無い!」
月が登り廊下を照らすがそこには襲われている少年の姿も自身を襲った人物も誰一人折らず廊下には襲われた二人分の血の跡があるだけだった。訳が分からず立ち尽くしていると突然周囲の蝋燭から火が付き廊下が明るくなり背中に冷や汗が流れる。
「...そうですか。やはりあなたが...驚きましたよ本当に..」
「Silver!」
「まさかとは思いましたが..やはりそうでしたか。面白い子ですね。狂見奏君」
「......」
「少し...私とお話ししましょうか?」
気配がした方へ向き合うとSilverが不敵な笑みを浮かべながら話しかけてきた。手に持っている薄汚れたランプが歪さと不気味さを引き立てられた。シルバーの他にも住人たちが狂見を見下ろし捕食者のような目をしている。狂見は被食者の弱さを感じながら話し合いに応じることにした。
シルバーに案内されたのは先程と同様に広間だったが先程とは異なり皆が狂見を捕食者として見ており気が気でない狂見は悟られるぬようにSilverを見た。シルバーは両手を組むと狂見に向かい笑みを見せる。
「そんなに警戒しないでください。別に今この場で取って食おうとしているわけではないのですよ」
「......」
「警戒されるも無理はありませんよ。狂見奏君..あなたは私たちのゲームの参加者に選ばれたのですから」
「はあ?ゲームの参加者?何を言ってるんだ?」
「理解できないのも無理はありませんね。私たちはとあるゲームをするために集まったのです」
「あるゲーム?それって一体なんだ?」
「ああ...そうですね...簡単に言えばデスゲームです」
「はあ?デスゲーム..ふざけてるのか?」
「ふざけてはいませんよ。私を含めてこの黒川邸の住人全員でとあるデスゲームをします。そしてこのデスゲームを生き残った人間があらたな主人となるのです」
「生き残ったってじゃあSilver...お前も前の主人を」
「殺しました。そして私が生き残り私が主人としてこの黒川邸を守ってきたのです。そして今夜から14日間殺し合い15日の早朝までに生き残っている住人がこの黒川邸の新たな主人となるのです」
「はあ?可笑しいだろ..狂ってる」
「そんなこと言わずに...」
「仮にそうだとしてなんで...ちょっと待て!さっき俺がゲームの参加者っていたか?ふざけるなよ。俺は関係ない!ないのに何で!」
狂見はSilverに訴えると笑みが消えて真顔で狂見を見る。その瞬間悪寒が走り空気が変わった。
「あなたが死ななかったからですよ」
「はあ?」
「だって...あの時あなたを殺したはずだったのに殺せなかった。あなたを殺した瞬間時が戻ったんです」
「気づいていなかったんですか?私はもう...あなたのことを百回は殺しているのに」
「え?」
「あなたは気づいていなかったでしょうがもうすでに死んでるんです。一度目は私の忠告を聞かず屋敷から出た時。二度目はCynthiaの料理を食べた時。そしてそれからあなたは禁止事項の深夜二時を破り何度も廊下へ出て私に殺されています。にもかかわらずあなたはこうして生きている。あなたを初めに手を掛けた時にこの学生証を拝借しました。信じられないでしょうが本当のことですよ。部屋に会ったマッチが証拠です」
「マッチが...だってあれは湿ってて使えなくて...」
「本当にそうでしょうか?」
「あのマッチはただ湿っていたのでしょうか?」
「何故一本だけ無事だったのでしょうか?」
「ではなぜマッチは湿っていたのでしょう?」
「なんでマッチのことを知って...」
「私に質問に答えてください。なぜあなた部屋に会ったマッチは湿っていたのでしょうか?ならマッチが湿った原因は何でしょうか?」
「そんなの分かるわけ!」
「いえ...あなたは分かるはずですよ。何故ならあなたはその匂いをかいだことがあるからです。死ぬときに」
「死ぬ時って...まさか!」
「ようやく気付きましたか?あのマッチが湿っていた理由はあなたの血がマッチに着いたからです。以前殺した時にマッチにあなたが付着して湿ってしまいました。あなたが廊下に出た際にランプを持っていました。あなたが死んでランプが割れて血が流れれ染みこんだり、マッチを通りだした時に貴方の血でしみ込んだのです。そして時間が戻りました。ですが時間が戻っても使った物は使用済みとして引き継がれるようですね。ですからマッチが濡れていたり貴方の学生証をこうして拝借しているわけです」
「ご理解いただけましたか?」
「...それで俺をどうしたいんだよ」
「私達黒川の住人はこのデスゲームを歴代伝承してきました。このデスゲームを通して新たな主人を決めようと思っていた矢先に邪魔ものや貴方のような見知らぬ客人がやってきた。いつものように殺そうと思いましたが殺せず時間が遡ると来ました。それではせっかくのゲームが無駄になります。死なないなんてそんなつまらないことはない」
「私たちは考えたのです。今夜は記念すべき100回目のゲームの日。ですからイレギュラーを受け入れようと思います。正直なところ私達黒川は衰退しもう長くはないでしょう。使用人もこの屋敷に住む者だけ。生き残っても長くは続かない。そのため少しルールを変えることにしたのです。死なない人間を殺す。こんな面白いゲームは他にありませんから」
ゲームのルールについて
➀今夜から14日間のゲームを行い15日の早朝まで続く
➁ゲームの始まりに一人生贄を捧げる
③ターゲットを決める
④ターゲットに選ばれた者は対象者に命を狙われる
⑤一日に一人の対象者がターゲットを殺す。
⑥無事にターゲットを殺せたら対象者の勝ちとなり主人となる
⑦ターゲットを殺せなかったら対象者が死ぬ
⑧ターゲットを殺す対象者・嘘をつく偽善者・助ける・救済者が存在する
⑨偽善者・救済者は必ず存在するわけではない
⑩偽善者・救済者を殺してはならない
⑪ターゲットは対象者を見つけなければならない
⑫偽善者・救済者を対象者と間違えてもペナルティーはない
⑬対象者の邪魔を偽善者・救済者は行ってはいけない
⑭対象者・偽善者・救済者以外の物は傍観者となりゲームに参加してはならない
「これがゲームのルールです。ご理解いただけましたか?」
「ああ...だからってはい!分かりましたっていうわけないだろ」
「でしょうね。私もそう思います。ですが安心してください。ゲームは14日間行いますが殺しに来るのは一人です。毎回ではないですがあなたを助けてくれる者もいますし、何よりターゲットはあなた自身なので分かりやすいではないですか」
「嘘をつく偽善者もいるけどな。なにより自分を殺しに来ると分かってるゲームに参加するわけないだろ」
「おや?いいんですか。参加しなくて」
「するわけないだろ?」
「これは私があなたにできる最大の配慮なのに」
「配慮?これが?」
「そうですよ。貴方いわば部外者です。本来ならこのゲームのことは他言無用ですし、生贄として殺すはずでした。しかし、貴方は死ななかった。何度も殺しているのに時間だけが元に戻る。私も無駄なことはしたくないのです。あなたも何でも殺されるは嫌でしょう?互いのことを考えた提案です。私たちはこのゲームをして新たな主人を決めたい。貴方は殺されたくない。ならばあなたを殺せたものを主人とすればいい。あなたを殺せなければその資格がないと切り捨てる。逆にあなたは殺しに来る私達を見つけ逃げ切ればいい。無差別に殺しに来るよりいいのではいでしょうか?あなただっていつ・どこで・誰に殺されるなんて四六時中考えたくはないでしょう?ですからの提案です」
「私の提案に参戦してくれますよね」
と言い手を狂見に差し出す。Silverは狂見が断れないことを理解しながら様子を伺う。ゲームのターゲットとして一人が殺しに来てそれを回避するか、住人全員に襲われると恐怖するのではどちらが良いかは明白だ。狂見はSilverの手を握った。
「分かった。そのゲームに参加する」
「あなたならそう言っていただけると思っていましたよ。狂見奏君。では今夜からゲームを始めましょうか。詳しいことは目を覚ましてからCynthiaが説明いたします」
「部屋で目覚めてから?戻ってからじゃなくて?」
「はい。おやすみなさい...狂見奏君」
「は?」
Silverは狂見の腕を強く握ると首を切り落して殺した。返り血を浴びたSilverが一息すると書斎に戻っていたが狂見の血で一張羅が汚れており別の服に着替えた。
「そろそろ彼が目を覚ます時か...」
Silverはベルを鳴らしCynthiaを呼び出すと先程の話しを伝える。Cynthiaは会釈すると狂見の部屋に向かった。Silverは住人たちに合図を送ると住人たちはゲームの知らせを聞き歓喜の声を上げる。
「さて...それじゃあ...ゲームを始めようか」
これから狂見と黒川邸の長いゲームが始まる。
黒川邸と十五人の怪しい住人達 時雨白黒 @siguresiguro
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