焚殺人

能村竜之介

大雪 新月の終わり

 冬の夜。


 明かりもない山道。溶けかけた雪が凍らせた轍。


 それを辿って登っていくひとりの男。


 凍った土を踏む音。枝を踏み折る音。枯れ葉を踏みにじる音。


 そして、歩行のたび発生する異様な音。


 がちゃり。がちゃり。火炎放射器が己の金属部品同士で鳴らす音。


 ちゃぷん。ちゃぷん。タンクの燃料が波打つ音。


 黒装束に喪を服した男、小望月こもちづきは――――焚殺人ふんさつにんであった。

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