靴と恋のマリアージュ


 貧乏貴族令嬢のリルジェシカは、靴職人。タイトルからしてもう、え?それはどうゆうこと?と思っちゃいます。

 貴族ではあるのですか、家は貧乏。借金があり、おまけに婚約破棄されてしまうところからスタートするこの物語。
 ずいぶんな境遇のリルジェシカですが、彼女は靴づくりに夢中。履く人に喜んでもらえる靴をつくることができれば後は何にもいらないし、そもそも自分には靴作りしかできない。


 ところがひょんなことから彼女の靴が王女殿下の目に留まります。そこからリルジェシカの靴が素晴らしいと評判になり……。


 リルジェシカの成功をよく思わないライバル。逆に彼女の作品のすばらしさに気づき応援してくれる人たち。さらに王女殿下の素敵な近衛騎士フェリクスに見染められてと、もうどきどきはらはらの連続ですよ。

 物語は靴という誰でもが身近にある題材をとりあげ、それを作るというテーマをしっかりと中心に据えつつ、リルジェシカとフェリクスの恋愛が絡みます。
 にもかかわらず、ストーリーはシンプルで文章は読みやすく、それがゆえにぐいぐい物語に入り込みめます。

 恋愛小説にあまり興味のないぼくも、ずるずると引き込まれたし、読み始めたら止まらない。
 靴作りという読者の興味をひくテーマから、シンプルゆえに心を摑む恋愛、そして二人の絶妙なすれ違い。

 そして、ラストはもちろんハッピーエンド。おふたりさん、どうぞ靴の右と左が形がちがうけれど決して離れることのない対であるように、いつまでも楽しく二人で歩んでいってください。


 本作は、第八回カクヨムコンテストプロ部門応募作です。コンテストということで今回かなりたくさんの作品を読んでレビューを書きましたが、この作品はまさに抜群でした。


 にしても。
 プロットなしで書いたって、マジか……。


その他のおすすめレビュー

雲江斬太さんの他のおすすめレビュー438