番外1話 「等級について」



世界観説明①

――――――――――――――


『貴方がくたばらないために』 著者:不明


都にあるものすべてに与えられるのは等級だ。


1から10まであるこの数字は、数が小さい、つまり等級が高いほど希少だったり豪華だったり強かったりする。

勝ち組の人生はきっと、バラ色に満ち溢れてんだろう。

え?数が大きい奴はどうかって?

気の毒に……。上手く生き延びることを願うよ。

無理だろうがな。


上げ方を教えてやるよ。必要なのは3種の神器だ。

『金』『力』『名声』 ……単純だろ?


代表的なのは、『事務所クラン』やそれに属する『冒険者ろくでなし』だろう。事務所が1等級ってだけで、人材は集まるしギルドからの依頼もひっ切りなしだろうな。


10等級の事務所?売り込むしかないだろうな。

借金して、いい建物を構えてさ……。

伝手を頼って仕事を貰うか。

他の事務所に媚びへつらって仕事を回してもらうとか、上手く考えてくれ。

ま、明日明後日か…ひっそり無くなってるよ。そしてまた別の誰かが看板を掲げるだろうな。

そうだ、忘れるなよ?

等級の高い事務所に等級の低い冒険者が入ることはまず無い。

引き抜きならまだしも、入りたいなんて言っても門前払いだからな。

質が落ちたと見なされて、等級が下がるから。



冒険者について?

あんまり夢をみてないといいが、できた人間が必ず上位の等級になれる訳じゃない。

屑だってなれるさ。

だから性格がとか容姿がとか、そんな心配しなくていいぞ。

ただ能力は……無いと厳しいだろうな。


知ってると思うが、競争率は凄まじいぞ。

それに仕事だって楽じゃない。


あの化け物、異形。見ないで済むめばいいが、あの危険な奴らの相手もしなきゃならない。普段は都の外にいるが、時折、中に入ってくるらしいんだ。


それに、依頼主や事務所が望めば、同業だって殺すことになる。

まぁ珍しい話じゃない。咎められる訳じゃないんだ、楽にやれよ。

それが無理だってんなら……、

どっかのご老人が逃がした猫を探すとか、

あれが欲しいって叫ぶご婦人の使いパシリでもやるんだな。

金になるかは知らないが。


こんな職業でもみんな成りたがるのは、3種の神器が手に入りやすいからだ。


最後に、のし上がるなら命以外も賭ける気で挑め。

成功すれば、ベッドの上で死ねるだろう。


昔はこんなんじゃなかったんだけどな。

名前通り、ちゃんと冒険してたんだろ……。

これじゃ、夢を見た少年が可哀そうだ。

「僕、冒険者になる!」

そう言って現実を知らないままバラバラになるんだからな。

いい加減呼び名を変えたほうがいいと思うが、名残ってのは厄介でな。

あんたも心当たりがあるんじゃないか?


そういやアンタ、両親はいるか?

え!?あんたの両親は1等級!?おめでとう!

そっちの君の家族は10等級!?生まれたことに感謝だな!


がっかりするなよ。

結局、蛙の子は蛙ってこった。

でも嘆くことはない。例外もある。

実際、力があって頭も切れてれば、きっと運が回ってくる。

そいつをものにできれば上がれるだろうよ。


頑張れよ、あんたがくたばらない為にな!


――――――――――――――


「眠い…」

 ダッシュは本を投げ捨てた。

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