二重スパイという設定が秀逸。そして推しへの愛愛愛! 彼女を必ず救うのだ

主人公シドは、魔王軍の最高幹部でありながら、魔王アリアを討つべく人類から放たれたスパイだった。
そのスパイ、シドの土壇場に突然よみがえる前世の記憶。
この世界は、前世でプレイしていたRPGの世界、そして殺すべき魔王アリアは愛して愛して愛してやまない、推しの美少女だったのだ。

まずこの設定から、秀逸すぎる! 
異世界転生+ゲーム世界はもはやテンプレとなった現在ですが、ここで人間軍に反逆し、寝返る展開ならありきたり。
しかし、この主人公は、人類のスパイとしての使命も完全には放棄しません。もちろん推しのアリアを殺すなんてことは絶対にさせません。

敵は、人間軍にあらず。
真の敵は、ヒロインを殺そうとする世界の意思、シナリオの強制力なのです。

これだけでも、主人公のかっこよさが際立ちます。もちろんファンタジーに不可欠な魔法描写のかっこよさ、ヒロインの可愛さ、可憐さも完備。強大な力を持つ魔王ヒロインアリアに、主人公シドと共にメロメロになったとき、読者は誓うのです。「必ずこの子を守ろう」と。

設定、キャラも素晴らしいのですが、バトル描写も精緻で、迫力がありとってもお勧めの一作です。