裏切ろうとしていた魔王が、実は前世での推しだと思い出してしまった主人公。そこから王国のスパイである立ち位置や前世の記憶を活かして、魔王破滅のシナリオをぶっ壊す……というような一見シンプルなストーリーなのですが、まず主人公や魔王アリアのキャラが滅茶苦茶いいです。
元より備わっていた計算高さに、魔王一筋な前世の記憶が合わさることで生まれる、魔王のためなら手段を選ばないという覚悟の決まりきった主人公像。しかしそこに寸分の綻びもないかというとそうではない。その時折滲み出る人間らしさこそ読者がクスッと笑えるポイントでもあり、主人公の魅力をより一層引き出していると思います。
また、強く美しく、常に頂点に立つアリアが主人公にだけみせる可愛らしさ。このギャップが最高に魅力的で、もう推さずにはいられない!主人公に一瞬で感情移入できるという点でも非常に尊く素晴らしいです。
主人公にもアリアにも言えることですが、作者さんはこのキャラの魅せ方の塩梅が本当に上手だと思います。
更に、キャラ同士の掛け合いやストーリーも面白く、次から次へと予測不能の展開が続き、読み進めるたびに先が楽しみになること間違いありません……!
全体的にわかりやすく読みやすい、洗練された文章だと思うので、ラノベが好きな方はもちろん、普段あまりラノベを読んだことがない方にも、強くオススメしたい一作です。是非、ご一読ください!!
主人公シドは、魔王軍の最高幹部でありながら、魔王アリアを討つべく人類から放たれたスパイだった。
そのスパイ、シドの土壇場に突然よみがえる前世の記憶。
この世界は、前世でプレイしていたRPGの世界、そして殺すべき魔王アリアは愛して愛して愛してやまない、推しの美少女だったのだ。
まずこの設定から、秀逸すぎる!
異世界転生+ゲーム世界はもはやテンプレとなった現在ですが、ここで人間軍に反逆し、寝返る展開ならありきたり。
しかし、この主人公は、人類のスパイとしての使命も完全には放棄しません。もちろん推しのアリアを殺すなんてことは絶対にさせません。
敵は、人間軍にあらず。
真の敵は、ヒロインを殺そうとする世界の意思、シナリオの強制力なのです。
これだけでも、主人公のかっこよさが際立ちます。もちろんファンタジーに不可欠な魔法描写のかっこよさ、ヒロインの可愛さ、可憐さも完備。強大な力を持つ魔王ヒロインアリアに、主人公シドと共にメロメロになったとき、読者は誓うのです。「必ずこの子を守ろう」と。
設定、キャラも素晴らしいのですが、バトル描写も精緻で、迫力がありとってもお勧めの一作です。