切なさという言葉では足りない読了後の虚無感

親に苦労させられた二人はお笑い芸人の養成所で出会った。振り返ると散々な15年間だったかもしれない。才能に淘汰され、チャンスは平等ではなく、現実は残酷で。それでも満身創痍な死の間際に浮かぶのは相方の顔。二人は確かにコンビだった。

人を笑顔にさせるお笑い芸人の下積み時代を描く本作。都合の良い展開も奇跡もない。ただあるのはヤニ臭いリアルさと、恋とも愛とも言えない純な何か。それでも、何かに憧れて躍起になる姿は見ていて輝かしい。例えどんなに日の当たらない場所にいようとも。

湿気多めな彼らの世界に千両が舞ってほしかったと心から思います。切なさという言葉では足りない読了後の虚無感。もう少し、噛み締めていたいです。

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