会話の妙。そして約五千字の中に立ち現れる、確固たるディストピア。

まず最初の二行で心奪われました。
創作物における面白い会話の条件の一つに「発された言葉の内容と意図にズレがある」点があるかと思うのですが、これはまさしく面白い会話。

一筋縄でいかなそうな登場人物たちに惹かれて文章を追っていくと、次いで立ち現れてくるのはディストピア化した世界のありさま。
約五千字の短さとは思えないほどに、世界の息苦しさや不公正さがひしひしと伝わってきます。
生きづらい世界の中で己が課をこなす主人公は、やはりここでも裏と表を使い分ける。追いかけている人物も、安易に真意をさらけ出したりはしない。
本意を隠す登場人物たちと、そうせざるをえない抑圧された社会のありようが見事に描き出されていると感じます。

堪能させていただきました。
ありがとうございました!!

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