【マッチ売りの少女】の場合


 今日は、一年の終わりの大晦日の日。


 そんな日に、小さな女の子が一人、マッチを売っていました。


「マッチはいりませんか、マッチはいりませんか……」


 けれど、マッチを買う人はいませんでした。


 やがて、夜になり女の子はガタガタと震え始めました。


 けれど、女の子は家に帰りません。


 マッチがまだ、一つも売れていなかったからです。


「このまま帰っても、何も食べられないだけだわ」


 女の子の体は、どんどん冷たくなっていきます。

 女の子はだめだと思いながらも、売り物のマッチを一本擦りました。


 小さな炎がひろがります。

 すると……


 目の前に、大きなストーブがでてきました。

 女の子は両手を伸ばして温まろうとします。

 

 でも、マッチの炎が消えると、ストーブは無くなってしまいました。


 こんどこそストーブで温まろう、そう思いもう一度マッチを擦ります。


 すると……


 目の前に、おいしそうな料理が沢山でてきました。


 ふかふかのパンや、温かそうなスープ、そして大きなチキンの丸焼きもあります。


 食べたことのないご馳走に、女の子は思わず手を伸ばしました。


 でも、マッチの炎が消えると、全部なくなってしまいました。


 女の子のお腹はペコペコです。


 一口だけでも。


 そう思って、もう一度マッチを擦ります。


 すると……


 大きなクリスマスツリーが出できました。


 女の子が見上げていると、ツリーのてっぺんに、誰かがいました。


「あっ! おばあちゃん!」


 それは死んでしまった、おばあちゃんでした。

 おばあちゃんはにっこり笑い、女の子に手を振っています。


 しかし、その姿が、だんだん、薄くなっていきます。


「いや! おばあちゃん、消えないで!」


 女の子は夢中で、持っていたマッチを全部擦りました。


 そうして、目の前に来た、おばあちゃんに抱きつこうとした時でした。


 「大丈夫か、君!」


 私を呼ぶ声と共に、誰かに引っ張られてしまって、おばあちゃんに抱きつく事ができませんでした。


「救急車!早くお願いします」


 私を抱き抱えている人が、スマホで救急車を呼んでくれています。


 助けてくれた人の迅速な対応のお陰で女の子は助かりました。


 そして、何の巡り合わせか、助けてくれた人がなんと偉い人で、その人からスマホの声のお仕事をもらいました。


 女の子は、それからはその日のご飯の事を気にしなくても良くなりました。


 私たちが聞いているSir○のこれはもしかしたら、人間の声かもしれませんね

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世界を渡るスマホ 雨琴 @amakoto

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