【北風と太陽】の場合

 むかしむかし、仲の悪い北風と太陽が降りました。いつも自慢ばかりいいやっていました。


「わしの方がえらいんじゃ」

 北風が言います。


「私の方がえらいと思いますよ」

太陽も負けません。


「それなら、勝負しよう」


 そこへ、旅人がやってきました。

旅人はスマホを構いながら歩いています。


「先に、ながらスマホを辞めさせた方が勝ちじゃ」


 北風が前に出ました。


 北風は、激しく息を吐きました。

 つめたい風がビュービューふきます。


「寒い、寒い」

 旅人は、寒がるだけでスマホから目を離そうとしません。


「今度は、私の番ですよ」

 太陽が、ニコニコ笑いました。


 あたりにギラギラ光があふれます。

 しかし、どうでしょう。


「暑い、暑い」

 旅人は、そう言っただけでスマホから目を離しませんでした。


「この勝負、引き分けですね」


 北風と、太陽が本気で挑んでも達成出来ないことがあると知った両者は、これから仲良く過ごすのでした。


 その頃、旅人は道端の足につまずいて、転んだそうな。

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