【ごんぎつね】の場合


 むかしむかし、ある所に、一人ぼっちの 小狐がいました。


 名前を、ごんと言いました。


 ある日のこと、ひょうじゅうという若者が、川に網を仕掛けているのを見つけました。


 川の中にキラリと光る物があります。


「鰻がかかっている!」

 ごんはいたずらしたくてうずうずしました。


 ひょうじゅうが後ろを向いたすきに、えいやっ、と、鰻を全部逃そうとしたところで、賢いごんは気付きました。


 スマホで一部始終撮影されている事に。


 ごんは逃げました。


 ひょうじゅうは、後でスマホの映像を見ながら安堵しました。逃がされなくて、よかったと。


 あの時の鰻を逃がされていたら今のお母さんの状態はないでしょう。


 病気のおっかさんは、すっかり元気になり、今では、一緒に釣りが出来るぐらいに回復しました。


 その頃、ごんは困っていました。あれからスマホを使っている人が増え、食べ物が取れなくなってしまったのです。


 お腹ペコペコで川沿いを歩いていると、ひょうじゅうたちに出会いました。


 すると、ひょうじゅうのお母さんが釣った魚を分けてくれました。ごんは、心から思いました。あの時のヤケクソで、鰻を逃さなくてよかったと。


 その後、ごんは、ひょうじゅうと家族として仲良く暮らしました。


 今でも、ひょうじゅうのスマホには鰻を逃がそうとしているごんと、家族みんなでとった家族写真が残っています。

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